おそらくこれまでで最も注目された暗号資産(仮想通貨)のエアドロップは、必ずしも開発者たちが期待したような熱狂的な盛り上がりにはなっていない。
アイゲンレイヤー(EigenLayer)はイーサリアム上のリステーキングプラットフォームで、ユーザーへの公開後から1年も経たたないうちに(しかも公式ローンチは先月だったにもかかわらず)、すでに預け入れられた暗号資産は160億ドル(約2兆4800億円、1ドル155円換算)相当にのぼっている。
預け入れの大半が行われた頃、アイゲンレイヤーはイーサリアムブロックチェーン上の単なるウォレットに過ぎなかった。将来の報酬の見込みをちらつかせながら、実際にはまだ何の機能もない金庫だった(プロジェクトは4月、正式ローンチしたが、多くのミッションクリティカルな機能は欠落したまま)。
EIGENのエアドロップ
主なインセンティブモデルとして、アイゲンレイヤーに暗号資産を預け入れた者にはポイント(アイゲンレイヤーや他のサードパーティが追跡する、デポジット額やデポジット期間に応じて蓄積される)が付与された。ポイントそのものは暗号資産ではなかったが、ほとんどの人は最終的に暗号資産に変換されることを期待していた。このような期待は、他の新興の暗号資産プロジェクトが数カ月にわたって、同様のプログラムを実施したことを倣ったものだ。
さらにアイゲンレイヤーに入金してポイントを獲得するだけでなく、ポイント取引で「40倍のレバレッジ」を提供するPendleのようなプラットフォームで、ポイントをそのまま取引し始める人もいた。
アイゲンレイヤーのポイントプログラムはユーザーを惹きつけ、何十億ドルもの資金を呼び込んだが、先日ついにEIGENトークンのエアドロップが発表されるとコミュニティは怒りに包まれた。
まず、トークンは将来の未定な期日まで譲渡不可能であることが明らかになった。つまり、ユーザーは投資を現金化するためにさらに長い期間待つ必要がある。
「トークンが初日に譲渡可能であるという意図的な通達はされなかったが、アイゲンレイヤーのポイントプログラムが1年近く続いているという事実が、初日にトークンを受け取ることができるという期待につながったことは確かだ」とブロックチェーン・マーケットインテリジェンス会社IntoTheBlockのリサーチリーダー、ルクサス・アウトゥムロ(Luxas Outumuro)氏は述べた。
「彼らがトークンをさらに分散化させたいと考えるのは理解できるが、ユーザーからの期待に適切に対処しなかったのは、管理上のミスだ」
募る不満
アイゲンレイヤーがエアドロップを特定の地域のユーザーに限定したことで、さらに多くの反発が巻き起こった。ユーザーの入金やポイント獲得には地理的な制限を設けていなかったため、なおさらだ。米国、カナダ、中国を含む十数カ国のユーザーはエアドロップから締め出された。
「ポイントをめぐって思わせぶりな姿勢が多く、利益の総和は無制限な仕組みを作っていて、誰もが勝てるようになるなど、戯言のようなことばかり言っていた。そして彼らは実質的に、潜在的なユーザーとエアドロップの受け取り手の3分の2を除外した」と匿名を条件に取材に応じたアイゲンレイヤーのベンチャー投資家の1人は騙った。
「米国をエアドロップから切り離すことはまったく問題ないと思うが、それなら最初から使わせるべきではなかった」
他の批判は、トークンの「シーズン1」配布計画にも及んでおり、一部のポイント獲得者の手元にはEIGENトークンが届くが、他のユーザーは詳細が明らかにされていない「シーズン2」のエアドロップを待たなければならない。
つまり、リキッド・リステーキングサービスやその他のサードパーティプラットフォーム経由でアイゲンレイヤーに暗号資産を預け入れたユーザーは、EIGENトークンをどれくらい受け取れるのかまだわからない。
「アイゲンレイヤーは、他の人たちがある意味再担保化するなど、クレイジーなことを許す選択をした。『そういうことは止めてほしい、それらのポイントを尊重すると確約していない』と言うこともできたはずだ」と、リキッド・リステーキングプラットフォームEther.Fiの創設者マイク・シルガゼ(Mike Silgadze)氏は語った。
アイゲンレイヤーはコミュニティーからの反発を受けてトークン計画を修正したが、アイゲンレイヤーが暗号資産コミュニティから再び好感を集めることはないだろう。
ポイントの抱える問題
ポイントプログラムによって生まれた期待を満たすことに苦労しているプロジェクトはアイゲンレイヤーだけではない。
アイゲンレイヤーのリキッド・リステーキングプロトコルであるRenzoは先月、そのポイントシステムが投資家の期待に応えられず、同様の反発に直面した。
暗号資産ポイントの先駆けのひとつであるブラー(Blur)は、ポイント期間を繰り返し延長し、トークンのエアドロップのタイミングや方法に関するルールを変更したことで批判を受けた。
いくつかのポイントプログラムはほとんど物議を呼ぶことなくエアドロップに転換したが、ますます多くのポイントプログラム、特にアイゲンレイヤーのような大規模なプロジェクトが失望を生んでいる。
多くの投資家は、暗号資産スタートアップの間では当たり前になったポイントプログラムが、ついに終わりに近づいているのではないかと考え始めている。
シルガゼ氏は、ポイントは「トークンのローンチに先立ち、プロトコルでの活動を奨励する」方法だったと説明した。ユーザーはエアドロップでのトークン獲得を目指して、プロトコル上で活動するが、最終的にどのような活動がエアドロップにつながるかは正確にはわからないという、古いやり方を改善したものだ。ポイントベースのシステムでは「プロトコルが何をしてもらいたいかがより明確になる」と同氏は述べた。
ポイントシステムは潜在的ユーザーを惹きつける素晴らしい方法だが、同時に規制から身を守る手段でもある。暗号資産企業は、ICO(新規コイン公開)でトークンを直接販売することを躊躇している。規制当局のターゲットになりかねないからだ。
情報の非対称性
しかし、コンパウンド(Compound)の創業者で、アイゲンレイヤーの開発元であるアイゲン・ラボ(Eigen Labs)に投資するロボット・ベンチャーズ(Robot Ventures)の投資家、ロバート・レシュナー(Robert Leshner)氏は、投資家の保護と透明性の提供という点ではポイントは最悪のものと考えている。
「投資家保護の根本は、投資家とスポンサーの間に情報の非対称性がないことを確実にするところにある。しかしポイントは、暗号資産において最大の情報の非対称性を生み出す」とレシュナー氏。「すべてはチームの裁量に委ねられており、ユーザーと投資家はチームから正しい扱いを受けることを祈るばかりだ」と続けた。
レシュナー氏は、ここ1年間のポイントシステムの失敗の数々は、最終的にこの取り組みが廃れていくことにつながると考えている。
「暗号資産の世界で最も大きく、最も野心的で、最も本格的なプロジェクトの1つであるアイゲンレイヤーがポイントプログラムで失敗するのを目の当たりにしたらどうなるか? アイゲンレイヤーでさえもうまくやれないのなら、誰にできるというのだろうか? 誰にもできないだろう」
参考資料:https://www.coindeskjapan.com/231744/
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Source: 仮想通貨情報局