米証券取引委員会(SEC)が承認した初のビットコイン先物ETF(上場投資信託)が19日、取引を開始し、暗号資産(仮想通貨)市場はそれを受けて値上がりした。
米資産運用会社プロシェアーズ(ProShares)が手がける「プロシェアーズ・ビットコイン・ストラテジーETF(ProShares Bitcoin Strategy ETF:BITO)」は、ニューヨーク証券取引所で取引されている。
承認されたこのETFが実際にはどんなものなのか?このような商品にどれほどの潜在的需要があるのか?
関心の高さを測る方法の1つは、世界中の他のETFがどのようなパフォーマンスを見せているか、そして投資家がビットコイン投資商品に実際に何を求めているのかを検討することだ。
今回SECが承認したETFは、先物ベースの投資商品であり、原資産を保有するものではない。先物ベースのETFは、ビットコイン(BTC)そのものではなく、ビットコインのデリバティブと連動している。
CoinDeskの別の記事から引用すると、「ビットコイン先物は、優勢な市場心理によっては、ビットコインのスポット価格から逸れるかもしれない。つまり、ビットコイン先物ETFも時に、ビットコイン価格とは正確に連動しない可能性があるのだ」
対照的に、スポットベースのETFは原資産を保有し、投資家はビットコインの値動きに直接的に連動した投資を行うことができる。しかし、ビットコイン現物ETFは、SECに繰り返し申請を却下されている。
カナダのETF
アメリカでの先物ETF誕生の影響を理解しようとする場合に、比較のためにカナダほど適した場所はないだろう。北隣のカナダでは、数十億ドルの運用資産を誇るトロント証券取引所において、いくつかの暗号資産ETFが取引されている。
中でも代表的なのは、「3iQコインシェアーズ(3iQ Coinshares)」、「パーパス・ビットコイン(Purpose Bitcoin)」、「CIギャラクシー・ビットコイン(CI Galaxy Bitcoin)」の3つである。中でも、10月13日時点での運用資産残高が12億ドルと、パーパスが最大規模となっている。
ここで重要なのは、運用資産残高トップ3のETFはすべて、スポットビットコインに直接投資したものでる点だ。一方の先物ベースのETFの運用資産残高は、カナダのETFの約0.3%に当たるわずか760万ドルとなっており、投資家がどちらを好むかが垣間見える。
パーパスとCIギャラクシーのETF保有者を見ると、興味深い事実が浮かび上がる。金融データ企業FactSetによれば、パーパス・ビットコインETFを保有するのは「未知の人物や組織」であるのに対し、CIギャラクシーETFの保有者の最大28%はベイン・キャピタル・パブリック・エクイティ(Bain Capital Public Equity)とCIインベストメンツ(CI Investments)という機関投資家である。
これはおそらく、パーパスETFの保有者は個人投資家、あるいは小規模な投資顧問であることを意味している。CIギャラクシーETFを手がけるCIグローバル・アセット・マネジメント(CI Global Asset Management:CI GAM)とギャラクシーは機関投資家に重点を置いているのに対し、パーパス・インベストメンツは、革新的な消費者向け金融サービス企業をうたっている。
暗号資産の成長は主に、個人投資家が後押ししてきたものであることを考えると、パーパスのETFの運用資産残高が、CIギャラクシーの3倍以上であるのも驚きではないのかもしれない。
さらに、パーパス・インベストメンツは先日、分散型金融(DeFi)への投資を可能にする私募ファンドに加え、さらに3件の暗号資産に特化したETFを申請したと発表した。
国際的にはスポットETFが優勢
ドイツやスイスを含め、世界中の投資家が、現物連動型ETP(上場取引型金融商品)に集まっている。
21シェアーズ(21Shares)のビットコインETPは、スポットBTCに100%連動しており、スイス証券取引所と複数のドイツの証券取引所で取引されている。その運用資産残高は、5億ドルに迫る勢いだ。
カナダのETF同様、21シェアーズのETPはビットコイン単体に100%連動したもので、暗号資産インデックスや複数資産に連動したものよりも需要ははるかに大きくなっている。暗号資産インデックスや複数資産に連動したもので最大規模の商品でも、その運用資産残高は2億1500万ドルにとどまっている。
ビットコインETFの世界に最近参入してきたブラジルも、スポットベースのオプションを選んだ。QRキャピタル(QR Capital)が手がける100%ビットコインに連動したビットコインETFは、サンパウロ証券取引所で取引され、運用資産残高は4100万ドルだ。
なぜ投資家はビットコイン現物ETFを好むのか?
暗号資産投資会社のビットワイズ・アセット・マネジメント(Bitwise Asset Management)のCIO、マット・ホーガン(Matt Hougan)氏によれば、先物ETFは、1〜2%の手数料に加え、満期ごとに新しい先物契約へとロール(買い替え)するために1年にさらに5〜10%のコストがかかる。さらに、先物ETFは原資産に85%しか投資しておらず、残りの15%は他の資産クラスに投資される。
スポットETFは、先物ETFよりも原資産の価格により密に連動しており、コストは低い。カストディリスクなしでビットコインに直接投資したい投資家にとっては、より魅力的な選択肢なのだ。
例えば、ブルームバーグによると、ホライズン(Horizon)のインデックス「Front Month Rolling Bitcoin Index」が過去2年間で530%のリターンを上げたのに対し、ビットコインそのものは同期間に660%のリターンを記録している。
ビットコイン、ビットコインスポットETF(パーパス)、ビットコイン先物ETF(Horizon Betapro)の価格の関係を見てみると、先物ETFもビットコイン価格と十分に連動している。しかし、スポットETFの方が、価格の相関関係は少し強いものとなっている。
スポットETFを保持するコストが先物ETFを保持するコストより低いことを考えれば、ビットコイン価格に連動した投資をするためには、スポットETFの方が優れたオプションということになるだろう。
下記の価格の相関関係を示すグラフは、ドルベースでETFがどれほどビットコインと連動しているかを示すために、リターンの相関関係ではなく、価格の直接的な相関関係を見ているものである点に注意してほしい。
なぜSECはより人気の低い先物ETFの承認にこだわるのか?
SECのゲンスラー委員長は、投資家保護と、先物市場やその他のデリバティブに伴う監視という点を、明言している。ゲンスラー委員長は、スポットビットコイン市場は操作に合う可能性があり、ETFにとって適切ではないと考えている。
しかしビットワイズは、規制を受けたCME(シカゴ・マーカンタイル取引所)はいまや、価格発見のリーダーとなっており、スポットベースのETFに適したオプションだと主張している。
アメリカにおいて、ビットコイン関連ETFの誕生は長らく待ち望まれたものであったが、ETFを手がけることを目指す企業がより恵まれない状況にある国も存在する。フランスやオーストラリアでは、「暗号資産に特化した」エクイティ・ファンドの提供が始まったばかりだ。
マイニング企業や、マイクロストラテジーのような暗号資産に投資した戦略的企業の株を保有することが、暗号資産業界の成長に賭けて投資することを望む投資家にとっては抜け道のような方法であった。アメリカでのビットコイン先物ETF承認は、他のETF市場におけるアメリカの支配的な地位を考えれば、世界中の規制当局を導くものとなるかもしれない。
先物ベースのETFは、投資家にとって第1希望ではないかもしれないが、暗号資産とETFの組み合わせが大成功を収め、両方のセクターに新しい投資家たちを呼び込むかもしれない。
世界的なETF業界の運用資産残高は現在、9兆4000億ドルで、年率26%で成長している。一方の暗号資産市場の時価総額は2兆7500億ドルで、その大半は、個人投資家向けの取引所、グレイスケール(Grayscale)などの投資信託、あるいはオンチェーンで保管されている。
アメリカのETFの運用資産残高は、市場全体の70%に当たる5兆4700億ドルであり、そこで暗号資産ETFが登場したことは、今までにない影響をもたらす可能性を示唆している。
先物商品への需要が十分にあれば、ETF市場へと資本が流れ込み、BTCへの買い圧力が高まるかもしれない。取引初日を見る限りでは、アメリカ市場は明らかに、ビットコインにより簡単に投資する方法を待ち望んでいたようだ。プロシェアーズのETF「BITO」の取引高は10億ドル以上と、あらゆるETFの取引初日の中でも歴代2番目の好成績を収めた。
さらに、先物ETFの登場は、ビットコイン取引市場の成熟と、スポットETF実現への足掛かりとなるかもしれない。規制を受けたCME市場が価格発見を担っているというビットワイズの主張にSECが同意すれば、ビットコイン現物ETFの登場も、それほど先のことにはならないかもしれない。
参考資料:https://www.coindeskjapan.com/126942/
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Source: 仮想通貨情報局