ルール形成が仮想通貨市場に与える影響
イノベーションにおけるルール形成の必要性の周知に努めるCRSTubeは、Kawasaki-NEDO Inovation Center(K-Nic)とコラボし「世界市場で勝つルールメイキング戦略~暗号資産に見るルール形成~」をテーマとした討論会が行われた。
そのゲストとして、日本ブロックチェーン協会代表理事、株式会社bitFlyer Blockchain CEOを務める加納裕三氏、元内閣府副大臣の福田 峰之氏、多摩⼤学ルール形成戦略研究所客員主任研究員の萩生 泰之氏らが参加している。
ルール形成の重要性とその過程
規制に関して、不明瞭な点も多い現在の仮想通貨市場だが、福田氏は「新興市場におけるルール形成は必要不可欠」だと語り、「優れた技術が存在しても、ルールがないと判断軸がないため社会に広まっていかない」とし、その重要性を強調した。
しかし、同氏が実際に仮想通貨市場のルール策定にかかわる中で、様々な壁に直面したという。まず初めにぶつかった壁は、ビットコイン以外にも存在する仮想通貨の総称をどう呼ぶかという問題だ。
結果として「価値記録」という名称がつけられたのだが、その決定に至るまでに、非常に考え抜かれたプロセスを経ていたことが見えてくる。
加納氏によれば、「通貨」は既に法律用語となっていたため、「Crypto Currency」を翻訳した暗号通貨という文言を使えなかった。その中で、当時の関係者らは市場の発展という観点から、「価値記録」との結論に至ったのだと話す。ルール策定の関係者の一人である萩生は、以下のように当時を振り返った。
(仮想通貨は)価値交換の手段がある一方で、マイニングをすると価値が生み出され、所有者などが記録されるという、金融的側面とIT的側面の二つがあった。
どっちで捉えるかとなったとき、金融的アプローチで捉えてしまうと、ルールがガチガチになりかねない。
日本市場が海外に比べて小さかった当時、暗号資産・その根幹技術のブロックチェーンに、新たな産業として芽がある中で、金融ではなくIT的側面に焦点を当てて規制を進めたほうが、より自由な市場形成ができ、市場の広がりを見せるのではないかということで、「価値記録」として名称が決まった。
このように法整備においては、名称の決定や変更が市場形成に非常に大きな影響を及ぼしうることが見て取れる。
ルール形成のジレンマ
新技術の普及や市場の発展にとってルール策定が大きな意味を持つことが分かるが、そこには数多くのジレンマも存在する。
例えば、黎明期の仮想通貨市場において、本人確認やセキュリティ向上の観点から、加納氏は自主規制によるルールの作成に取り組んだ際、強制力がないことで頭を抱えていたと語っている。
セキュリティ向上や本人確認などに関する適切な規制のもと、イノベーションを促進したかった。
しかし自主規制(本人確認など)をすると顧客獲得コストが20倍から30倍に上がる。それほどコストが上がると、自主規制を進めようとする企業とそうでない企業との間で派閥が生まれた。
こうした派閥が生まれる中、自主規制を定めずに法のグレーゾーンを突く企業は得をし、自主規制を守る企業にとっては不公平ともいえる状況が生まれてしまう。このような状況を経験した加納氏は、「最初に明確な規制は作れないけども、自主規制だと強制力がないというジレンマに対する解決策が見つかれば、事業者としてはやりやすい」とし、ルール策定における課題を示した。
一方で、加納氏と福田氏の両者は共に「最終的に残っている企業は自主規制をしっかりと守った企業だけ」と話すなど、中長期的には消費者保護をきっちり行った企業だけが残っているとし、規制を守ることによる企業側のメリットについても説明。企業および市場の発展にとって、規制が果たす役割の大切さを語った。
参考資料:https://coinpost.jp/?p=193276
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Source: 仮想通貨情報局