米国の暗号資産関連の規制についてどのような事項が新しいトピックとして議論されているのでしょうか?本コラムでは、議論されている将来の規制の方向性や関連の動きについて概観します。
その他多くの業界の同じように、企業活動と規制の流れの両面において米国の動きは、他国に伝搬する可能性が高いと言え、同国の状況を俯瞰することは重要性が高いと言えます。もちろん、それは日本にとっても例外ではありません。本レポートが、国内の業界関係者や投資家・ユーザーに役に立てば幸いです。
ニューヨーク暗号資産の新規上場プロセスを大幅変更
ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)は、仮想通貨事業許認可であるビットライセンス(Bit License)の規定内容を大幅に変更する予定であることを示しました。トークンの上場基準を明確化することが盛り込まれています。
- すでにNYDFSのウェブページに掲載されているBTC、BCH、ETH、ETC、LTC、XRP、PAX、GUSDに関して、各ライセンス事業者は事前にNYDFSの承認を必要とせずに上場させることができる。(ホワイトリスト制度)
- 各ライセンス事業者はそれぞれの運営モデル・リスクに沿った形で、具体的な銘柄の上場プロセス・ポリシーを提案する。ポリシーがNYDFSに承認された場合、事業者は「自己承認」としてDFSの事前許可なく新規上場を行える。(自己承認制度)
来年1月までにパブリックコメントの募集を行い、実施を目指すとされています。ビットライセンスは米国で最も認可が厳しい暗号資産規制であり、米国内でデファクトスタンダードになっています。今回の提案の新規トークンの上場プロセスが反映されると、オフショア取引所に対して上場が遅れがちなアメリカ市場のボトルネックが解消されると期待されています。
ビットコイン(BTC)を貨幣と認める、ワシントンDCの裁判所
米首都ワシントンD.C.の連邦裁判所が、ビットコインはワシントンD.C.では資金移動法において貨幣、または貨幣のようなものであると判決を下しました。
ビットコイン取引プラットフォームを違法で運営していたマネーロンダリングで起訴されていた被告の裁判で出された判決です。
銀行で暗号資産の保管が認可される
米国政府通貨庁は、国内全ての銀行に対し、消費者向け仮想通貨カストディ業務の運営を許可することを事実上容認するとパブリックレターで明らかにしました。今後、銀行を通してビットコインの購入と保管や、送金取り扱いなどもできるようになる可能性があり、実現すると極めて大きい影響があると予想されます。
ブロックチェーンプロジェクトの規制に関わるセーフ・ハーバー(Safe Harbor)
証券取引委員会(SEC)職員のヘスター・パース(Hester Peirce)氏は、「 セーフハーバー(Safe Harbor) 」の提案を2020年2月にまとめて提出しました。この提案は、独自の暗号資産を発行するブロックチェーンプロジェクトに対する規制や制裁に関わるものです。
暗号資産のプロジェクトは、最初の時点は少数のプロジェクトチームによって集権的にローンチをして、徐々に分権化する傾向があります。また最初は証券性を持っていたアセットでもある時点を超えるとコモディティに近い性質に変化するという特性を持ちます。
例えば、イニシャル・コイン・オファリング(ICO)時点でのETHは少数の開発者による集権的な証券のようなものでしたが、その後イーサリアムは多くの開発者の協力によって、現在では広く分散してコモディティのような扱いをされています。
「Safe Harbor 」の骨子は、こういった背景から最初の3年間は猶予期間として、証券性の観点での違法を指摘した制裁をせずにブロックチェーンプロジェクトを育てようとするものです。そしてある規定金額以上の調達を行う場合や、3年後に十分に分散化されていない場合に関しては、証券登録をするように示したガイドラインです。この提案について議論を多く呼んでいるものの、法案化までは長い道のりであると言えます。
米国の規制やルールの影響に注目
いかがだったでしょうか。日本国内ではあまり議論されていないようなトピックも多いことや、早い段階から改正資金決済法により交換事業者の枠ぐみを作った日本からすると柔軟であると感じる部分もあるのではないでしょうか。このような規制やルール整備が産業にどのような影響を与えるかに注目されます。
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Source: 仮想通貨情報局