暗号資産(仮想通貨)の時価総額の1%にも満たない分野が、6月以降、大きな注目を集めている。分散型金融(DeFi=Decentralized Finance)だ。DeFiはイノベーションの中心であり、実験、あるいは新時代の西部開拓地と呼ばれている。その事業は猛スピードで進行し、既成概念を破壊している。
CoinDeskの報道を見ると、DeFi市場の状況がよくわかる。「熱狂的なブーム」「狂乱」「流れ込む資金」「画期的なプロトコルの登場」の文字がタイトルに並ぶ。
新しいDeFiプロトコルに関するニュースやアイデアが次々と登場していることは、暗号資産やデジタル資産、ブロックチェーンに関連する制度導入に水を差すことになるだろうか?
我々は、少なくとも業界には自主規制が必要だと考えている。それがなければ、規制当局による重大な精査と評判上のリスクを招くことになる。
DeFiについて懸念を表明しているのは我々だけではない。イーサリアムの生みの親、ヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏は8月14日、DeFiへの懸念をツイートした。
注意:イーサリアムに参加するために「最新のホットなDeFiというもの」に参加する必要はありません。実際、何が起きているかを「本当に」理解しているのでなければ、ほとんどの場合、参加しないか、少しだけ参加するのがベストでしょう。
他にもたくさんの種類のイーサリアム(ETH)の分散型アプリケーション(dapp)があります。試してみてください!
また、DeFiを代表するプロジェクトであるコンパウンド(Compound)の創業者、ロバート・レシュナー(Robert Leshner)氏は、イールドファーミングについて次のようにツイートしている。
もし、spaghetti.moneyがローンチ後36時間以内に5億ドルを獲得できるなら、業界は自主規制を行い、こうしたミームファーミングゲームのローンチを止める必要がある。
2017年のICOブームとの類似点
暗号資産と同様に、ほとんどのDeFiプロジェクトには強い感情や考えがあり、その本質と現実を見極めることは難しい。この現状は果たして暗号資産とブロックチェーンが目指すべき姿だろうか。まるで、2017年のICO(イニシャル・コイン・オファリング)バブルのようだ。
ICOとDeFiに類似点はある。
熱狂的な取引は試験運用もほとんど行われることなく、監査も受けずにスタートする。明確な規制指針は欠如し、イーサリアムの取引手数料は高騰……。
我々は、規制当局が動き出し、Dao Reportのような文書を出す瀬戸際にいるのだろうか。
Dao Report:2016年、分散型アプリ「The Dao」はICOで当時最高額となる資金を集めたが、ハッキングを受け6000万ドル(約63億円)のイーサリアムを奪われた。Dao Reportは、SEC(証券取引委員会)によるこの事件の調査報告書。また、この事件の対応をめぐる意見の相違によって、イーサリアムからイーサリアムクラシック(ETC)がハードフォーク(分岐)した。
法律面では、どの機関が規制を担当すべきかについての明確な合意はない。そしてさらに言えば、DeFiプロジェクトや広くこの分野の責任を負う可能性がある複数機関からの指針もない。
我々は、さまざまな事業者や運営者の潜在的な役割と、その活動、ガバナンス、そしてDeFiエコシステムとの潜在的な相互作用に関する全方位的な理解が明らかに欠けていることを懸念している。
トークンは一夜にして出現する。プロジェクトは「issue(発行する)」「issuance(発行)」「issuer(発行者)」を連想させるような用語を使わない。これらは証券業界ではきわめて重大な意味を持つ言葉だからだ。
検討すべき課題
プロジェクトを「実験的なゲーム」あるいは「イノベーション」と呼ぶだけでは、規制の対象から外すことはできない。
焦点は、証券規制における「the issuer(発行者)」とICO以降に見られたHowey Test(ハウェイテスト:トークンが証券にあたるかを判断するテスト)から、コモディティ規制を適用した複雑な分析へとシフトしている。すなわち、誰が「支配的なステークホルダー(利害関係者)」であり、彼らに責任はあるのかという視点だ。
証券取引法と商品取引法の両方の観点から、それらはどのようにDeFi(分散型金融)に適用されるのか、また、再構築されるのかなど、多くの問題を検討しなければならない。
主な問題としては、「支配的なステークホルダー」はDeFiプラットフォームでの議決権によって決まるのか、投資家グループと創業者の中で誰が議決権を持っているのか、取引所上場のための基準は必要かなどだ。
さらに、これらのプロジェクトを「分散型」と定義することで規制の対象外とするのか、あるいは「中央集権型」のプロジェクトを「非仲介型金融」と呼ぶべきかなども問題として残っている。
新しいルールの必要性
規制上の不確実性にもかかわらず、トレーダー、プロジェクト、取引所は全速力で前進しており、その結果、トークンは正当な理由のない価格変動のリスクが高くなり、ガバナンス、流動性、プロジェクトの健全性に影響を与えている。
3月中旬に起きたメーカー(Maker)の機能停止は、システムリスクとレバレッジに対する警告だった。市場の暴落はイーサリアムブロックチェーンの混雑と取引手数料の高騰を招き、プロジェクトのガバナンス投票を妨げ、結果的にガバナンス手続きの見直しが必要となった。
イーサリアム価格の上昇を楽観視する人もいるが、取引手数料の上昇とネットワークの混雑は、金融の民主化というDeFiの長期的目標と両立できるのだろうか?
我々の考えでは、DeFiのさまざまな取り組みは、業界の新しいルールを作る必要性を表している。つまり、監査、適切なリスク開示、そして事前に悪い事態を想定しておくことなどだ。DeFiの自主規制は、担保充足率の審査、監査基準、通常のガバナンスと緊急時のガバナンス、そして配布集中型のトークン所有を正常化するだろう。
適切な規制機関によって構成されたDeFiのサンドボックス(規制の適用を特例として停止して、新技術などを実証するための制度や地域)は、主に「イールドファーミング」のためにロックされた資産が過度のボラティリティ(価格変動)などにさらされることのない仕組みへの糸口となるだろう。
実験は、サンドボックスのアプローチである、一定のペースで成長することになり、実験的プロジェクトのコミュニティへの参加は監視される。
DeFiのガバナンスは?
DeFiのカオス的状況の一例としては、YAMがある。コードは未監査で、ステーブルコインであるとアピールしたが、わずか48時間で急激なブームと破綻を引き起こした。
ステーブルコインについては、規制当局が現在もその位置づけを検討中であることを忘れてはならない。SEC(証券取引委員会)のデジタル資産担当上級アドバイザー、バレリー・シュシェパニャク氏は、あるタイプのステーブルコインは「証券取引法のもとで問題を引き起こす可能性がある」と述べた。
加えて、IOSCO(証券監督者国際機構)の報告書は、ステーブルコインは証券である可能性があると指摘した。我々には、国家レベルと、G20を含む国際レベルの双方での具体性が求められている。
ガバナンスは多くのDeFiプロジェクトの中心課題であり、改革を求めている従来の金融の構成要素であることは間違いない。残念ながら、DeFiでは危機的なガバナンスが多くなりすぎている。
こうしたプロジェクトの多くはガバナンス・プロトコルに依存しており、ごく少数の参加者がプロトコルを変更できるか、または変更するよう圧力をかけることができる。
トークンが規制当局の監督なしに作られ、流通し、取引されるという規制上の抜け穴が今後どうなるかはまだわからない。少なくとも、SECのヘスター・ピアース(Hester Peirce)理事が提案し、我々も今年はじめにコメントした修正版セーフハーバー(一定の基準や要件を満たしていれば、法令違反とはならないとされる範囲)があれば、SECはある程度の監督を行うだろう。
今のところ、DeFiトークンは毎日のように登場しており、トークンの爆発的な増加は目的の歪みにつながり、投資家はプロジェクトが崩壊するなか、痛い目にあっている。
参考資料:https://www.coindeskjapan.com/76492/
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Source: 仮想通貨情報局