そろそろ発表といわれつつも、次期FRB議長人事の発表がまだで、市場をやきもきさせています。
いろいろなうわさはありましたが、とりあえず今のところの話では議長の可能性は3名に絞られた形。
テイラー・スタンフォード大学教授、パウエルFRB理事、イエレン議長(留任)です。
このうち、テイラー教授とパウエル理事に関しては、正副議長での同時指名の噂もあります。
各候補者毎の市場の動向見通しをまとめてみましょう。
もっともハト派的なスタンスなのがイエレン議長。
現状のスタンスを維持し、来年以降もゆっくりとした利上げペースを守っていくと期待されます。
現状維持のため、本来は売り材料とも言い切れませんが、その他議長への期待が強い分、短期的にはかなりドル安が強まる可能性があります。
パウエル理事は現在のFRBメンバーの中では、中立派として知られています。
基本的にはイエレン路線を踏襲するとみられるため、利上げペースはゆっくりとなると期待されますが、イエレン議長ほどはっきりとしたハト派ではないため、来年以降の利上げへの期待感はやや強まりそうです。
相場への影響は最も穏やかと予想されます。
もっともタカ派的なスタンスなのがテイラー教授です。
テイラー・ルールで知られる教授。同ルールで計算された政策金利は、政策反応パラメーターの決定方法や需給ギャップの計算などによって数値が変わるものの、概ね3%以上と見られており、教授が議長になった場合、これまで以上に利上げに積極的になるのではとの見通しがあります。
また、教授はグリーンスパン元議長、バーナンキ前議長らの低金利政策への批判でも有名で、2000年代中盤の米国の住宅バブルと、その後のリーマンショックなどはこうした低金利政策がもたらしたものと主張しています。
議長についた場合、来年以降の金利引き上げ見通しがかなり強まりそうです。
テイラー教授とパウエル理事の正副同時指名の場合、少しタカ派色が薄まりますが、FOMCは多数決といっても、これまで議長提案が一度も否決されたことのない会合だけに、議長の意見はかなり重要。
テイラー教授が議長についた場合はタカ派的な期待感が強まりそうです。
政策金利は翌日物(FF金利翌日物誘導目標)のため、利上げ期待は短期からせいぜい2年物程度までの金利に影響を与えがちですが、テイラー教授が議長就任の場合、かなりしっかりした利上げ路線が期待されるだけに、10年祭などの利回りもかなり大きく影響を受けそうです。
こうした長期金利の上昇は、機関投資家などの投資戦略に影響を与えますので、議長指名発表直後の短期的な影響だけでなく、中長期的なドル高圧力も期待されます。
なお、テイラー教授は現行の金融規制改革法であるドット・フランク法案への強い批判でも知られています。パウエル理事も金融規制には反対派のため、テイラー・パウエル路線が正式に決定すると金融規制緩和への期待が広がりそう。
こちらは米国の投資銀行業務の拡大や、投資の活発化期待にもつながり、こちらもドル高材料となりそうです。
こうしたことから、テイラー教授が議長に就任した場合、ドル円はかなり大きなドル高路線への流れが期待されそうです。
少し遠いとは思いますが、中期的には118円―120円が見えてくる可能性もあります。
minkabu PRESS編集部 山岡和雅
Source: ダックビル為替研究所 | Klug クルーク