IRS(米国税庁)のスイス銀行に対する強制措置の取り組みは緩和されるかもしれないが、その世界規模での圧力はまだ続くだろう。過去10年においてIRSは、外国に非公開銀行口座を持つ米国の納税者に対し、口座の公開を「促す」ことで、100億ドル以上の税収を得てきた。このプログラムは今年9月に終了するが、IRSは次の大きな税務順守圧力として仮想通貨に狙いを定め、準備を整えつつある。
最近創設されたJ5が、今後の見通しを与えてくれるかもしれない。J5とは、米国、英国、カナダ、オーストラリア、オランダによる国際的な税務執行当局の同盟を表す。この5ヶ国は仮想通貨を優先順位の高い検討課題とし、協力して情報の共有に取り組んできた。
J5はその使命記述書で、状況に応じて他国とも連携すると述べている。多国間相互自由貿易に反対する米国も、もはやこれまでだ!税務執行に関しては、米国は今後も外国政府と協力し、その捜査及び執行能力の向上を切望しているようだ。
英国のHMRCで詐欺調査サービスのディレクターを務めるサイモン・ヨーク氏は、サイバー犯罪は進化しており、「これまでと変わったのは、彼らが仮想通貨やダークウェブを利用していること」と述べている。そのような状況に応じ、J5は次のことを約束する。
既存の調査・諜報プログラムの強化。
新たな調査のための重要なターゲットの特定。
現在及び将来に向けての戦術的な諜報活動に対する脅威の向上。
国外の税務犯罪やサイバー犯罪の手段・弱点・リスクに関する戦略的な理解の進展において、より幅広いコミュニティーの指導。
J5が協力して、国際的な税務犯罪、サイバー犯罪、マネーロンダリングの減少と、そのような犯罪を企む者たちに対する不確実性の創出に取り組んでいることの、国際的な認知向上。
実際、これはどのような意味を持つのだろうか?再びIRSのスイス銀行に対する取り組みを振り返ることで、いくつかの手がかりが得られそうだ。外国に口座を持つ米国人に対し、自ら名乗り出るよう説得するため、IRSはアメとムチを使い分けた。これには、訴追の脅威や、隠し続けようとする者に対する罰金と同時に、IRSの自発的開示プログラムの1つに参加する者たちに対する、寛大な措置の約束が含まれていた。
しかしプログラム全体の重要な部分は、情報収集にあった。IRSは外国の銀行にその帳簿を開示させ、米国の口座保有者たちに引き渡させた。IRSがこの情報を手に入れたことで、納税者に名乗り出るよう説得するのは難しいことではなくなった。
IRSはこれと同じモデルを、仮想通貨の税務執行にも適用する可能性が高い。例えば、IRSは外国の仮想通貨取引所の情報を手に入れ、未納税者を見つけるために、ユーザーと口座を結びつけ始めようとするだろう。コインベースに対するIRSの召喚状は、氷山の一角に過ぎないのかもしれない。
また、J5の使命記述書が、今後の執行圧力に関するその他のいくつかの特徴をあらかじめ示している可能性がある。興味深いのは、J5が「マネーロンダリング」と「サイバー犯罪」を、少なくとも使っている言葉の上では、同じ脱税のグループにまとめているように見えることだ。さらに印象的なことに、J5はその執行対応に関する記述で、軍事及び諜報活動の専門用語を使っている。米国政府が軍事や諜報のためのツールを使い、薬物や武器の大規模密輸組織などの国際犯罪者を追跡するのは、普通のことではない。
しかし軍事・諜報ツールを利用して普通の脱税者を追跡することに、仮想通貨も含まれるのだろうか?仮想通貨に対しては、新たな方向性が示されるかもしれないが、それでもなお無視することはできない。J5の使命記述書には、「OECDの、各国に対する税務犯罪の成功要因への取り組み強化の要請に応えて」結成されたと言及されている。IRS及びJ5の他の加盟国は、この要請を重く受け止めているように見える。そのため仮想通貨関連の脱税には、IRSのスイス銀行に対する取り組みにおける海外口座よりも、さらに積極的な対応が取られる可能性がある。
このような状況から、税務順守は必須であり、IRSが口座やウォレットの存在に気づかないと想定することはできそうにない。同時に、民主主義国家においては、執行機関がその限度を超えないように注意することが重要である。市民的自由擁護派の弁護士やその他の自由主義者たちが、このことを注意深く監視するのは間違いない。海外での脱税に対抗するために、軍事・諜報ツールを使うのは行き過ぎである。特に、自主的な税務順守の取り組みが非常に効果のあることが証明されているのだから、なおさらである。
ダシェル・シャピロ氏は、カリフォルニア州サンフランシスコのウッドLLPの税務パートナーであり、以前は米司法省で税理士を務めていた。その業務は税務論争や監査防衛に注力しており、国際税務や金融商品/仮想通貨税務計画の仕事にも関与している。
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Source: 仮想通貨情報局