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ソラナの価値を膨らませた架空の開発者集団【コラム】

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ソラナ(Solana)エコシステム全体の評判を揺るがすような事態が明らかとなった。ソラナだけでなく、ブロックチェーンや暗号資産(仮想通貨)開発および投資に潜む、深刻な社会的脆弱性が浮き彫りになるストーリーだ。

この話の中心にいるのは、11人の開発者たちのネットワーク。ソラナ上に築かれたステーブルコイン取引所Saberを中心に、複雑な分散型金融(DeFi)サービスのエコシステムを築き上げていた。彼らはトレーディングやステーキングなどの各種サービスを生み出し、預け入れ資産(TVL)は75億ドルに及んでいたと、主張していたのだ。

しかし報道によって、これらの開発者たちは実在しないことが判明。ディラン(Dylan)とイアン(Ian)のマカリナオ(Macalinao)兄弟2人が生み出した架空のアイデンティティだったのだ。イアン・マカリナオ氏が詐欺を告白していると思われる未発表のブログ記事を、メディアが入手した。

預かり資産75億ドルというのは、2021年秋にソラナ上の各種サービスで記録されていた資産合計の大部分を占めていた。当時ソラナ全体のDeFi預かり資産は、約105億ドルであった。

TVLはしばしば、スマートコントラクトサービスやプラットフォームの成功の指標とされており、ソラナが預かり資産をかなり抱えていたことが、イーサリアムに対抗する新進気鋭の競合というその主張を支えていた。

そしてそのナラティブは、昨年7月の40ドル未満から、11月のピーク時には259ドルまでソラナ(SOL)トークンが値上がりするのに、大きな役割を果たした。強気のソラナナラティブの大部分が、一連の欺瞞にもとづいていた、ということのようだ。

匿名

開発者の存在だけが、偽りだったのではない。マカリナオ兄弟は、明らかに騙す目的でSaberを運営していたようだ。「私はソラナのTVLを最大化するための策略を考案した。互いの上に重なるようにプロコトルを開発し、資産が何度も重複して数えられるようにしていく」と、イアン・マカリナオ氏は問題のブログ記事に記していた。

まだ多くは不明なままだが、この策略の最も衝撃的な点は、その目的が盗みにあったかどうかはっきりしないところだ。例えばマカリナオ兄弟は、数多くの偽のアイデンティティを盾に、ユーザーの資産を不正に使用したようには見えないのだ。しかし本件の真相は、まだ解明中である。

Saberエコシステムのユーザーに対する損害の多くは、マカリナオ兄弟が開発したとみられるアプリ「Cashio」へのハッキングから生じている。さらにマカリナオ兄弟は新興ブロックチェーン「アプトス(Aptos)」での新規プロジェクトに軸足を移すと発表し、ユーザーたちはいまや、見捨てられてしまったようだ。

この衝撃的な事件は、DeFiと暗号資産エコシステムに潜む、少なくとも2つの脆弱性と、はるかに大きな厄介な問題を浮き彫りにしている。

まず、暗号資産の世界にはつきものの、匿名開発者という問題。ビットコインの生みの親サトシ・ナカモトはいまだに匿名のままであるし、ブロックチェーン開発者たちが実名を隠したいと思うもっともな理由はいくつもある。

しかしそのような匿名性の常態化は、高速かつ一か八かな環境に、さらなるリスクをもたらす。偽名を使っていたとしても、実績を伴った既知の存在であれば信頼することは可能だが、そのような基準を、DeFi投機家たちが常に守っていないのは、明らかだ。

マカリナオ兄弟は、ツイッター上で偽の会話を練り上げて、お互いに支持を表明させることで、様々な実在しない開発者たちの評判を高めることができていたのだ。

TVLの罠

2つ目の問題は、DeFiにおける主要指標としてTVLを使っていることだ。マカリナオ兄弟のストーリーから浮き彫りになるのは、TVLを技術的に操作可能であるということ。今回の場合なら、別個のものに見えるが実際にはそうではない複数のサービスで、重複して資産を数えることによってだ。

DeFiデータサービスを手がけるDefiLlamaは、指標を操作しようとする同様の試みを阻止するための変更をおこなっており、この問題は解決可能かもしれない。

しかし、対処がはるかに困難な、より広範で複雑な問題も存在する。Saberのストーリーが明らかにしているのは、誠実ではない意図を持ったほんのわずかな人間が、暗号資産市場を大いに歪めることができるという事実だ。

マカリナオ兄弟の策略は、ソラナの価値について偽りの大きなメッセージを生み出した。そして当記事執筆時点でも、SOLは暗号資産トップ10に含まれているのだ。

「SOLの劇的な値上がりに貢献したと思う」と、イアン・マカリナオ氏もブログ記事で打ち明けている。私自身も、昨年の夏にSOLに手を出したが、チェーンが一時停止したのを受けて、損失を出しながらも売却し、今はもう保有していない。

テラ(Terra)やスリー・アローズ・キャピタル(Three Arrows Capital)、セルシウス・ネットワーク(Celsisus Network)など、私たちは最近、もっと心配になるような失敗や詐欺を目の当たりにしてきた。しかしそれらは、大規模なマーケティングの取り組みと、真剣さという体裁に支えられた、大いに広がったプロジェクトだったのだ。

テキサス州在住の20代の若者2人が、慎重に管理された偽のツイッタープロフィールだけで、少しでもそれらに匹敵するようなことを成し遂げられたという事実は、暗号資産に少なくとも今のところ内在する、大きなリスクをさらに強烈に思い知らせてくれるはずだ。

参考資料:https://www.coindeskjapan.com/157314/ 

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Source: 仮想通貨情報局

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