暗号資産(仮想通貨)の世界では、毎日のように新しい詐欺が登場しているようだが、この業界の成長はとどまるところを知らない。
NFT(ノン・ファンジブル・トークン)の人気は、少なくとも今のところ、作成者たちがNFTの価格を吊り上げ、人々が食いついてきたところでその資金を持ち逃げする「ラグプル(rug pulls)」などの詐欺のニュースを目立たなくしているようだ。
例えば、NFTプロジェクト「Frosties」で大規模なラグプルが発生した。2000人以上が、アイスクリームのキャラクターのデジタルコレクション品に130万ドルを支払ったが、匿名の作成者はソーシャルメディアぺージを閉鎖し、姿をくらましてしまった。
およそ8,900個のNFTコレクションはまだ存在しているが、デジタル資産の強さは、そのリーダーの強さに比例する。Frostiesコミュニティを率いる人がいなくなった今、これらのアートは単なる可愛らしいキャラクターでしかなくなってしまった。
DYOR(自分でリサーチをする)
一般的な指針としては、どんな規模であれNFTを買う時には、「DYOR:自分でリサーチをしよう(Do Your Own Research)」となる。しかし、規制当局や政府も追いつけないほどの速度で進化を続け、ハッカーたちが何十億ドルもの資産を奪っていくこの業界において、「リサーチ」は、グーグル検索やツイッターのスペースでのチャットなど、根拠のあやふやなものに感じられてしまうかもしれない。
NFTコレクターたちは、新しいプロジェクトやコミュニティに投資をする前に、その分野の人たちと友達になることを勧める。足を踏み入れやすい簡単な方法としては、無料のツイッタースペースでのチャットやディスコードのコミュニティに参加し、NFTプロジェクトが買い手に提供する追加のメリット(ユーティリティと呼ばれる)や、業界内部のニュースなどについて学ぶことだ。
NFTは、漫画や芸術作品、人形コレクションやスニーカーなど、レアなコレクション品に例えられる。楽しむ分には構わないが、それで老後の資金をすべて賄おうと思ったりしないことだ。
もちろん時にNFTは、経済状況を劇的に変えてくれることもある。NFTコレクション「World of Women」の例を見てみよう。2021年7月にリリースされたこのコレクションは、初期の平均価格は0.1 ETH(約300ドル)であった。現在ではマーケットプレイスのOpenSea(オープンシー)でもランキングの上位につけ、その価格は7〜8ETH(当記事執筆時点で2万1000〜2万4000ドル)だ。
「Women Rise」のNFTコレクションも売り切れるほどの人気で、わずか数カ月で、取引高は1900 ETH(当記事執筆時点で約590万ドル)に達した。
NFTを購入すると、ブロックチェーン上に消去できない形でデジタル所有権の記録が残る。そのためトークンは、会員証のような役割を果たすことができるのだ。
どのコミュニティにとっても有効という訳ではないが、多くのNFT作成者たちは、NFT購入に特典を与えることで価値を高めている。例えば、NFTが結びつけられたアート作品に加えて、オンラインクラブやゲームコミュニティ、ディスコードでのチャットやインタラクティブな体験への、独占的なアクセスを買い手に与えているのだ。
NFTのリスクと見返り
急速に流れ込む資金が、NFTの世界を分断している。NFTの秘める可能性は否定できないものたが、それにまつわるリスクと見返りには、頭がクラクラしてしまうほどだ。
「NFTは、犬が新しいおもちゃを手に入れて、あまりに興奮して噛みに噛んで粉々にしてしまう感じだ。そうしておもちゃはなくなってしまう」と、ブロックチェーンPR企業ライト・ノード・メディア(Light Node Media)の共同創業者兼CEO、ネルソン・マーチャンJr(Nelson Merchan Jr.)氏は話す。
「それと同じことを、NFTに対して私たちもしていて、ここに来て『こんな風にはしない方が良いのかも』と気づき始めているのだろう」(マーチャン氏)
自身も2017年以来暗号資産に投資しているマーチャン氏は、2021年6月のリリース直後に人気NFTコレクション「Pudgy Penguins」を購入した。同NFTコレクションの作成者たちは先日、プロジェクトが壮大な約束を果たすのに待ちくたびれたコレクターたちによって、追放された。しかしマーチャン氏は驚くことに、このプロジェクトの現状についてあまり心配はしていないようだ。
「間違いなくラグプルではなかった」とマーチャン氏は語り、ラグプルは素早く匿名で行われると指摘した。例えば、ラグプルとされるNFTプロジェクト「Bored Bunny」の場合には、詐欺師たちは1月5日、ソーシャルメディアアカウントを閉鎖するまでのわずか数時間で、2000ETHもの資金を持ち去ったのだ。
「Pudgy Penguins」プロジェクトの場合には、リーダーの交代プロセスはコミュニティ主導で公開されており、ある程度民主的だったとして、まだ可能性があるとマーチャン氏は主張する。
「失敗とされたプロジェクトの中には、実際には優れたものもある」と、マーチャン氏は述べる。「失敗を通じて、コミュニティはNFTから何かを築き上げる方法を見つけ出し、『何とか成功させよう』と立ち上がらなければならなくなる。このようなNFTプロジェクトは、成長の可能性を大いに秘めていると私は感じている。何とかしてみせる、と決意したコミュニティなのだから。結局のところ、NFTでも、暗号資産全体に関しても言えることだか、コミュニティがすべてなのだ。コミュニティが強ければ、プロジェクトも強いものになる」
長期的価値という点に関しては、投資家はNFTが既存のインフラとどのように融合できるかについて、未来を見据えて考えるべきだと、マーチャン氏は主張する。
NFTには、メタバースにおいてスマートコントラクトやQRコードを通じて、チケットやVIPメンバーシップ、セールなどに利用されることで、さらに大きな価値を解き放つ可能性がある。
マーチャン氏は、クラブを例に次のように説明した。「クラブは常に、人々に何度も通ってもらい、自らのブランドを気に入ってもらう方法を探している。これにはNFTがぴったりだ。ひと月に何度か同じクラブに通ったとしよう。行く度に特定の数のNFTをもらえる。ひと月に3、4回行けば、NFTのレア度が上がるかもしれない」
レアなNFTとはつまり、保有者が得られる特典がレアということだ。取引はすべてブロックチェーン上に記録されるので、このデジタル半券的なものは、子供の時にコレクションを集めていた靴の空き箱より、間違いなく優れているだろう。
分散型バリュー投資
NFTコミュニティへの投資は、分散型バリュー投資と考えることができるかもしれない。
「実際には、NFTから生まれるコミュニティ、少なくもコミュニティの生まれる可能性に投資しているのだ」とマーチャン氏は語り、「外から見れば、そのほとんどが失敗かもしれない。しかしエネルギーは実際には、非常に強力なものだ」と主張した。
コツは、盛り上がっているからといって買ってしまわないことだ。どれほど魅力的に見えたとしても。
「極めてクレイジーな業界だ。長期的な視野を持つ必要がある。転売のためにNFTを買うのだとしたら、それは単なるトレーディングだ。そこには多くのリスクがつきまとう」と、マーチャン氏は言う。
「しかし、本当にコミュニティが好きだから、あるいは直感的に、成功すると感じさせる何かがあるからNFTを買うのだとしたら、その方がずっと好ましいと私は思う」
参考資料:https://www.coindeskjapan.com/137938/
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Source: 仮想通貨情報局