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16億ドル相当のビットコインを買ったのは誰か?その理由は?

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長時間のドライブ中の小さな子供のように、暗号資産(仮想通貨)市場は先週、絶えず面倒な質問をし続けていた。「なぜ?」と。

具体的には、10月6日の数分間で、16億ドル(約1800億円)相当もの大量のビットコイン(BTC)を誰がなぜ買ったのか?

多くの人はこの大量購入を、強気のシグナルと見ているが、一歩下がって全体像を見てみると、より複雑な答えが見えてくるのかもしれない。比較的小さな暗号資産の世界だけではなく、資本市場をも巻き込むような答えが。

この大規模なビットコイン取引はどの様なもので、それがどこで、いつ、どのように起こったかを検討すると、なぜ、そして誰が、についてのヒントが見えてくるかもしれない。

何?

中央集権型取引所において、16億ドル相当のビットコインを買うために、1人の買い手、あるいは買い手の一団がオーダーをかけた。これは無視できないような大きさだ。比較してみると、ビットコインのスポット市場におけるここ2カ月の1日の平均取引高の約4.5%にあたる。

5分間にも満たない時間(協定世界時6日13:11〜13:16)でそれだけのビットコインが市場にやって来るというのは、どの取引所にとっても(あるいは3つの取引所を合わせたとしても)かなりの規模である。ほぼ即座に、ビットコイン価格は5万5500ドルと、5%値上がりした。

長期的な見通しを持った買い手ならば、できるだけベストな価格で取引することを目指している場合には、スリッページのリスクを抑えるためにもっと慎重になっただろう。

スリッページとは:約定レートと、そもそもその取引をすることに決めた時の売値と買値の中間値との差である。相場が大きく変動する時、スリッページが発生する可能性がある。

大規模な購入をすると、すべてのオファーに応じることによって、取引価格(すなわち平均の約定レート)は徐々に高くなっていく。しかし、少しずつ取引をすると、一度に取引するよりもゆっくりにはなるが、低い価格でオーダーを出す時間を、新たな売り手に与えることができる。

より大きな規模であるが、ある企業が大量のビットコイン購入をどの様に行なったのか、例を見てみよう。

米マイクロストラテジーが昨年、4億5000万ドルのビットコインを購入した時には、5分ではなく、5か月をかけてコインベースを介して取引を行なった。

この期間中に価格は徐々に上がっていったが、各取引によって、6日のような勢いでビットコイン価格が急騰することはなく、CEOのマイケル・セイラー氏は、買う度にコストを無駄にすることはなかった。

6日に16億ドル相当のビットコインを買った人の場合は、そうではなかった。その人は、取引を完了させるのをとても急いでいたようだ。

どこ?

この取引を引き受けた取引所を特定しようとすることで、買い手の動機についてのヒントが得られる。

取引が行われるに伴い、他の取引所に比べたコインベースでのビットコイン価格が急激に上昇したため、取引が発生したのは米暗号資産取引所のコインベースであったと推測する人もいた。しかし、データをもう少しよく見てみると、取引はアジアで発生したことが分かってくる。

データ提供を手がけるクリプトクワント(CryptoQuant)のCEO、キ・ヨン・ジュ(Ki Young Ju)氏によると、パーペチュアル先物契約でとりわけ大きな取引高を記録した取引所が3つあった。

その3つとは、バイナンス、フォビ、バイビット(ByBit)であり、3社とも厳密には中国に拠点がある訳ではないが、暗号資産の全面禁止を先日発表した中国と長年関係を持っている。

「主に@binance、@HuobiGloba、@Bybit_Officialのパーペチュアル先物市場において、クジラ(ビットコインの大口保有者)がBTCを購入。ベーシス比率は先物主導であったことを示しており、未決済の建玉が急増した時にはくじらはロングポジションに賭けていた。彼らは何かを知っている」と、キ氏はツイートした。

噂されている、米証券取引委員会(SEC)による先物ベースのビットコインETF(上場投資信託)承認に先立って、トレーダーが大きなポジションを買って出た可能性を、キ氏は1つの仮説として提示した。

ゲーリー・ゲンスラーSEC委員長が従来の姿勢通り、もし先物ベースのビットコインETFが立ち上げられた場合には、そちらの方が好ましいと繰り返しただけであったが、その後に承認の可能性の噂が市場に広まっていた。

「アメリカのクジラによる、ETF承認に対するフロントランニングの動きだった場合には、私の見解では、インサイダートレーディングとの批判を避けるために、非アメリカ系の取引所を使うだろう」と、キ氏はツイート。取引がコインベースでのオーダーに起因するものだという推測を否定した。

「コインベースでスポット取引高の優勢は最近ますます高まっているが、今年のはじめ頃に比べるとそれほど高くはない」と、キ氏は指摘した。

もちろんこれは、トレーダーがスリッページを受け入れた理由を説明してはいない。結局のところ、1つの大規模なオーダーにすべてを賭けて、噂が広まり始めた1週間後に規制当局による動きに対するフロントランニングをすることは、慎重でも合理的でもない。

非合理な活況が暗号資産市場に存在しないという訳ではないが、多くの参加者にとっては、それはバグではなく、特徴なのだ。しかし、10億ドル規模の取引を行えるトレーダーの一般的な特徴ではない。

むしろ、これら3つのパーペチュアル先物取引所が中国生まれである(もうそこを本拠にしてはいないが)という事実が、流動性が比較的高いことよりも重要なのかもしれない。

いつ?

このような規模の取引が、中国における資本市場の問題に困らされている1週間の真ん中に、中国の顧客とつながりのある取引所で発生したというのは、奇妙な一致である。

取引が発生する2日前、中国を拠点とする不動産開発業者「花様年控股集団(ファンタジア・ホールディングス・グループ)」は、2億600万ドルの債務の返済をすることができなかった。それによって、格付け会社のフィッチ・レーティングスによって格下げされた。

S&Pも、別の中国系開発業者Sinicを格下げするなど、事態は1つの会社に限った話ではない。もちろん、デフォルトの危機に瀕した借り入れ過多の巨大不動産開発業者「恒大集団(Evergrande)」に比べれば、これら2社などはかすんでしまう。恒大集団の株は4日、取引が停止された。

別の大手不動産開発会社「華人置業集団(Chinese Estates Holdings)」は7日、自社株が市場で40%以上値下がりしたことを受け、株式を非公開とした。華人置業集団は、恒大集団の大口投資家である。

つまり、中国の不動産市場では何か深刻な事態が波及的に発生している。国家の経済活動の約3分の1が不動産セクター関連であることを考えると、中国経済にとっては由々しき事態である。ちなみにアメリカでは、不動産セクターが経済全体に占める割合はわずか6分の1である。

どのように?

しかし、まだ他にもある。

ビットコインの大量購入は、メディアでは16億ドルと報じられていたが、ビットコインに対して16億ドルの米ドル札が支払われた訳ではない。

クリプトクワントのキ氏が正しいとすれば、現金市場ではなく、パーペチュアル先物市場で取引が行われた。つまり、ビットコインは最初の買い手の元には渡っていないかもしれないのだ。それでも、1つの市場は並行して動くため、現金市場にも影響はある。

さらに、使われた通貨はドルではない可能性が高い。取引には主に、テザーの手がけるステーブルコインUSDTが使われたようだ。USDTは多くの中国人によって、バイナンスやフォビなどの取引所で取引するのに使われている。

「取引の大半はBTC/USDTであった。つまり、買い手はすでにUSDTコインを持っていたということだ」と、キ氏は6日の取引について語った。

データサイトCyrptoCompare.comで取引高を見てみると、取引発生時には、BTC/USDTのペアが、BTC/USDのペアをおよそ2対1で上回っていた。

つまり、大量のUSDTを保有していた誰かが、(レバレッジが含まれていた可能性もあり、実際の取引のわずかではあるかもしれないが、)手持ちのUSDTをビットコインそのものと交換ではなかったとしても、ビットコイン投資のために取引したということだ。

もう1つの奇妙な一致?

先ほど中国企業の債務について触れたが、面白い事実がある。

ブルームバーグ・ビジネスウィークは7日、「Anyone Seen Tether’s Billions?(誰かテザーの数十億ドルを見たか?)」と題された記事を掲載した。著者のジーク・フォウ(Zeke Faux)氏は次のように語っている。

「アメリカに戻った後、テザー社の準備資産の詳細情報を示す書類を入手した。そこには、大手中国企業への何十億ドルもの短期ローンが含まれると書かれていたが、これはマネーマーケットファンドが避ける様なものだ。それは、中国でも最大手の不動産開発業社の1つ、恒大集団が破綻し始める前のことだったのだ」

さらに、以下のように続く。

「テザーは恒大集団の社債保有を否定しているが、テザーの弁護士であるヘーグナー(Hoegner)氏は、テザーは他の中国のコマーシャルペーパーを保有しているかどうかについて発言を拒否している。保有するコマーシャルペーパーの大半は、クレジット格付け会社から高い評価を受けていると述べていた」

テザーが保有する準備資産は、外部に対しては隠されたままだ。しかし、謎の買い手がブルームバーグのフォウ氏と同じ書類、あるいはテザーが中国のクレジット市場に投資していることを示す説得力のある証拠を見たのだとしたら、USDTを手放す動機は大いにあったことになる。16億ドル相当を一挙に取引することになったとしてもだ。

もちろんこれは、推測に過ぎない。誰が大量購入をしたのかが明らかとならない限り、その動機については決して分からないかもしれない。

暗号資産市場にも影響が普及した場合には、それが正しい動きだったかも、分からないだろう。

参考資料:https://www.coindeskjapan.com/125413/ 

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Source: 仮想通貨情報局

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