2020年の暗号資産業界で大きなトレンドになったものを挙げるのならば、DeFiは間違いなくその上位のキーワードに入るでしょう。DeFiバブルともささやかれるように、イーサリム(Ethereum)のDeFiのスマートコントラクトにロックアップされた資金総額は伸び続けています。その金額は執筆時点110億ドル(約1兆1,500億円)を超えています。
未完成な金融サービスとしてのDeFi
現在のDeFiは金融サービスとしては未完成であると言えます。例えば、現在は手持ちの資金が無い状態で仕事で使うノートパソコンを買うために20万円を借りたい場合、あるいは奨学金を借りたい学生が200万円を借りたい場合、DeFiの金融サービスは使えません。DeFiでもコンパウンド(Compound)など借り入れ(ローン)アプリケーションは多数ありますが、いずれのアプリケーションも担保資産の差し入れが必要です。
つまりイーサリム上のさまざまな金融プロトコルやアプリケーションによって構築されるDeFiのエコシステムは、従来の金融におけるクレジット(信用)の概念がないのです。
担保資産ありきで発展してきたDeFiのシステム
これまでDeFiのアプリケーションの多くは、スマートコントラクトに担保として差し入れされたETHをはじめとする暗号資産を元に、借り入れやレバレッジ取引、合成資産などの取引を行うことが基本的なコンセプトでした。オラクルが伝達する基準価格をターゲットにして担保資産が下落した際に清算を行うことは、スマートコントラクトが最も有効に機能する分野の1つで、それさえ機能すればローンや合成資産取引はとりあえず矛盾しません。この応用をさまざまな形で行いDeFiは発展してきたと言えます。
そのためDeFiにおけるファイナンスには常に担保資産が必要であり、かつ過剰担保を前提にしている側面があります。現在、DeFiでローンの借り入れをしているユーザーは借入金額に対しておおよそ150%-300%の担保資産を差し入れしています。このような過剰担保をすることで、ボラティリティの高い暗号資産を担保にして合成資産や借り入れをしても、システミックリスクは起こりづらいためです。
しかし、金融サービスとしては使いづらさもありこの状況が改善されなければ、冒頭で述べたような、ノートパソコンを買うために20万円を借りたいといった金融需要などは満たせません。
提案される解決策、時間をかけて使える金融サービスに
もちろんDeFi市場に機会を見出している起業家や開発者はこの課題を認識しています。DeFiでの金融取引で必ず暗号資産の担保資産が必要になってしまうシステムに対して、いくつか代替提案となるプロジェクトが進んでいます。
例えばAave Protocolでは、クレジットデリゲーションという機能を持ってDeFiに与信の概念を持ち込んで無担保ローンを実現しています。これはAさんがBさんの代わりに担保を差し出すというようなものです。
また、別の事例のTeller Protocolでは銀行APIに接続して信用情報を計測したあとで、その信用情報をスマートコントラクトにインプットするというモデルが構想されています。インプットした信用情報次第では、担保の差し入れが必要ない可能性もあります。
現在では、DeFiのユーザーのほとんどは暗号資産投機家が中心で、使える金融サービスとしては程遠いと言えます。一方でこのように改善策となるプロダクトも少しずつ提案されています。恐らくDeFIはこのような小さな改善が積み重なり、一般人の使用に耐えうる金融サービスに徐々に発展するのではないでしょうか。
参考資料:https://coinchoice.net/defi-lacks-concept-of-credits/
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Source: 仮想通貨情報局