米ベンチャーキャピタル大手セコイア・キャピタルの中国子会社が、アジアの4大主要通貨で構成されるバスケットに裏付けられたデジタル通貨の構想を中国政府に提案した。
この提案は、中国で5月21日に開かれた全国政治協商会議(全国政協)で、セコイア・キャピタル・チャイナの設立メンバーでマネージングパートナーを務めるニール・シェン(Neil Shen)氏が行った。バスケットを構成する法定通貨は、日本円と韓国ウォン、香港ドル、人民元。
全国政協は中国の国政助言機関で、さまざまな組織やメンバーが国家レベルの決定を支援する。全国政協に続いて、22日からは全国人民代表大会(全人代:年に一度開かれる国会に相当する会議)が始まった。2つを合わせて「両会」と呼ばれる。
バスケットを構成する法定通貨の比率
提案では、同通貨構想を「ステーブルコイン」と呼んでいたが、暗号資産(仮想通貨)やブロックチェーンなどに関する言及はなかった。構想では、中国人民銀行(PBOC)が取り組みを主導し、裏付けとなる通貨バスケットの構成比率はIMF(国際通貨基金)の「特別引き出し権(SDR)」を例に、各国の経済状況に応じて定められるとした。
提案の内容は、フェイスブックが主導して設立したリブラ協会が昨年6月に発表したデジタル通貨「リブラ(Libra)」の構想に似ている。
シェン氏は、このステーブルコインは3カ国間の貿易を促進するとした上で、同地域の貿易は新型コロナウイルス後の当該地域の経済回復の鍵になると述べた。。同ステーブルコインは、企業向けの新たな決済ネットワークでデジタルウォレットを使った有効な決済手段となり、アジア圏の貿易取引を円滑にする。
ステーブルコイン構想の提案者
今回の提案の作成には、全国政協のメンバーでもあるシェン氏に加えて、香港最高裁判所のケネディ・ウォン(Kennedy Wong)氏と、元香港政務司司長のヘンリー・タン(Henry Tang)氏、香港に拠点を置く中国人ビリオネアのSongqiao Zhang氏などの9人が参画した。
一般的に、全国政協における提案は、全人代で議論される具体的な法案と同等の影響力を持つことはない。
セコイア・キャピタル・チャイナの親会社で、カリフォルニアに拠点を置くセコイア・キャピタルは、暗号資産に関連する投資を行う数少ない大手ベンチャーキャピタルの1つである。
セコイア・キャピタル・チャイナは2014年、当時中国に拠点を置いていた世界最大級の取引量を誇る暗号資産取引所のフォビ・グループ(Huobi Group)に1000万ドル(約11億円)を投資している(フォビは現在シンガポールに拠点を置いている)。
香港に規制サンドボックスを作る
提案では、3カ国間のクロスボーダー決済サービスを改善するために、香港に規制のサンドボックスを作り、時間をかけてシステムを拡大させることも想定されている。
中国人民銀行の主導・監督によって、民間企業がステーブルコインを立ち上げ、金融技術でプロジェクトを発展させる。提案によると、法人ユーザーはステーブルコインをデジタルウォレットに保管し、ステーブルコインを裏付けるリザーブ(準備金)として法定通貨をカストディアン(資産の保有・管理の代行機関)に預ける。
香港金融管理局と中国人民銀行が、ステーブルコインのクロスボーダー取引を規制し、リスク管理を行う。マネーロンダリングを防止するためのフレームワークを作成する。
デジタル人民元とステーブルコイン
ステーブルコインは中国の中央銀行デジタル通貨、いわゆる「デジタル人民元」に先立って発行され、潜在的なリスクと技術的な問題を洗い出すためのユースケースとなることで、デジタル人民元発行への道を開くことができる。デジタル人民元が発行される際、ステーブルコインはデジタル人民元と「シームレスに」結び付けられる(同提案)。
提案は、香港は中国本土とアジア諸国を結ぶ重要な金融ゲートウェイであり、人民元のクロスボーダー決済の70%以上が香港で処理されていると強調した。
香港はこうした「地域ステーブルコイン」にとって最も有利な地域になり得る。香港証券先物委員会(Hong Kong Securities and Futures Commission)は2019年11月、暗号資産の取引と取引プラットフォームを規制するライセンス制度を作り、12社にライセンスを与えている。
この12社には以下の企業が含まれている:
・テンセント系の金融機関ウィーバンク(WeBank)
・アリババのフィンテック子会社アント・フィナンシャル(Ant Financial)
・インフィニアム(Infinium Limited):テンセント、中国工商銀行(ICBC)、香港の2つの機関投資家などによるジョイントベンチャー
・SCデジタルソリューション(SC Digital Solutions Limited):スタンダードチャータード銀行が65%の株式を保有
一方、中国人民銀行と中国の金融監視機関である中国証券監督管理委員会(CSRC)は、粤港澳大湾区(えつこうおうだいわんく:広東省・香港・マカオを結ぶグレーターベイエリアと呼ばれる地域)の金融システムを改革し、この地域の国際金融サービスを改善するブロックチェーンアプリケーションを強化する一連の取り組みを打ち出している。
2017年、中国政府は広東省と香港、マカオをより一体化し、これらの都市と中国本土の間の強力な金融関係を構築する取り組みを発表。この取り組みは、広東・香港・マカオのグレーターベイエリアの銀行に地域ネットワークを築き上げ、一体化した金融システムとして機能することを奨励している。
参考資料:https://www.coindeskjapan.com/64369/
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Source: 仮想通貨情報局