ブロックチェーンのビジネスコミュニティ「btokyo members」による初のオンラインイベント「『資金決済法・金融商品取引法』改正で何が変わるか?」が2020年4月27日、開催。日本STO協会で監事を務めるなど、フィンテック領域を専門にする弁護士の斎藤創氏(創・佐藤法律事務所 代表弁護士)を招き、法改正のポイントの解説や課題などについて議論した。
カストディ規制がスタートアップの重荷に
5月1日に改正資金決済法と改正金融商品取引法が施行され、そのビジネスへの影響を解説するのが本オンラインイベントだ。最初に、改正資金決済法についての解説があった。
まず一番大きな点として、「仮想通貨」から「暗号資産」への呼称の変更が挙げられる。またビットコインなどの暗号資産の保管・管理を行うカストディ業務に対して、規制が強化された点も重要だ。改正法では「他人のために暗号資産の管理をすること」が新たに規制対象となり、暗号資産のウォレットサービスを提供するような業者に対しても暗号資産交換業の免許が必要となった。
その影響により、暗号資産交換業の免許取得が困難なスタートアップ企業がビジネスの変更や撤退を余儀なくされた。暗号資産により株式のように個人の価値を取引できる「VALU」が2020年3月末によりサービスを終了したのが一例だ。
ただし、秘密鍵を預からないタイプのウォレットや、マルチシグのキーを一部のみしか保有していない場合などは原則カストディ規制の対象外となっている。パブリックコメントの回答により明らかにされた点については留意が必要だ。
暗号資産交換業者への規制強化
改正資金決済法では、暗号資産交換業者の利用者である投資家がより安全に取引できるように、規制が明確化された。たとえば、インターネットに接続されていないオフライン環境下にあるコールドウォレットで95%以上の暗号資産を管理し、5%以下のオンライン上にあるホットウォレットに関しても顧客資産と同種同量の暗号資産を保持することが求められる。
斎藤氏は「暗号資産の先物市場などヘッジ取引が未整備のまま、暗号資産交換業者が同種・同量の暗号資産を保持しなければならない状況では、当該リスクを交換業者がどう管理するかが課題だ」と指摘した。
また暗号資産の証拠金取引などデリバティブ取引については、FX(外国為替証拠金取引)などと同じように金商法による規制を受けることになった。これにより自主規制で4倍に制限されていたレバレッジ比率は、個人向けには2倍までと定められた。
「電子記録移転権利」を規定
次に改正金融商品取引法について最も重要なポイントは、これまでセキュリティトークン・オファリング(Security Token Offering: STO)として市場の期待を集めていたデジタル証券が、「電子記録移転権利」として法令により明確化された点にある。通常の株式や債券を発行するより低いコストで資金調達できることから、小口の調達も可能になると見られている。
これによりセキュリティトークン(ST)は暗号資産の定義から外れ、金商法でのみ規制されることになった。ただし、ファンドの権利など従来は二項有価証券であったものがST化した場合に、より情報の開示義務が課せられる一項有価証券として規制されることになるなど、厳格な規制がなされる。
斎藤氏は「改正金商法により、従来の株式や社債のST化が禁止されたわけではないが、どのような仕組みでSTが発行できるかは民法や商法の議論になる。たとえば株式のST化において株主名簿の記録はどうすべきか。不動産のST化では不動産登記なく所有権移転が可能なのか。今後もさまざまなスキームが考えられるだろう」と見通しを述べた。
オンラインイベントでは斎藤氏のスライドによる詳細な解説のほか、「フリマサイトで1ポイント1円の事前決済を行って、ポイントの出金を円ではなくビットコインで行った場合、カストディ規制に該当するか」「非金融がイシュアー(発行体)となる場合、法的観点から第二種金融商品取引業登録以外に必要な留意点は何か」など、オーディエンスからのより深い質問に答えるQ&Aセッションが行われた。ブロックチェーンのビジネスコミュニティ「btokyo members」では、今後もオンラインイベントを行っていく予定だ。
参考資料:https://www.coindeskjapan.com/63816/
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Source: 仮想通貨情報局