2021年にゲーリー・ゲンスラー(Gary Gensler)氏が証券取引委員会(SEC)の委員長に就任したとき、暗号資産(仮想通貨)業界が彼をどのように受け止めていたか、今振り返ってみると不思議だ。当時、変化をひどく必要としていた業界にとってゲンスラー氏は新鮮な空気を吹き込む存在と見られていた。
ゲンスラー氏の前任者、ジェイ・クレイトン(Jay Clayton)氏は暗号資産にほとんど関心がないように見えたが、ゲンスラー氏はMITでブロックチェーンの講義を担当していた。ゲンスラー氏は理解してくれるはずだった。そして、そのような人物であれば、既存の法律を守る必要性と、有望な業界の成長を可能にする必要性のバランスをとった賢明な道を見出すに違いないと我々は考えていた。
だが、大きな間違いだった。
最近では、暗号資産業界にいる、あるいはその関連分野にいるほぼ誰もが、ゲンスラー委員長指揮下のSECを嫌っている。彼はトークン発行業者に法的な明確性をまったく提供していないと多くの人が思っている。彼は議会が暗号資産に焦点を当てた新しい法律を作ることをサポートしていない(議題を見ればわかる)。彼はしばしば自分本位で自己中心的に見えるアジェンダを推進し、多くの人々を怒らせてきた。
フォーチュン誌は、ゲンスラー氏のSECでの任期を深く掘り下げ、我々の多くがすでに概要を知っていたことを具体的に取り上げた。記事は「30人以上の金融専門家、政治家、指導陣を含むSECおよび商品先物取引委員会(CFTC)のすべてのレベルの現職および元職員」とのインタビューに基づいた素晴らしいもので、読む価値がある。時間がない人のために、特に暗号資産との関連で、いくつかの重要なポイントを要約してお届けしよう。
政治的な動物
ゲーリー・ゲンスラー氏は規制当局者だが、政治家のように振る舞う。
ゲンスラー氏は以前、CFTCの委員長を務めており、2008年の金融危機の後に同委員会を指揮した。彼は当時制定された法律でCFTCの権限を拡大するよう働きかけ、数々の新規則を押し進め、CFTC職員のためのオフィスを全米に設けた(予算の制約からその多くは空いたままになっている)。
2016年、彼はヒラリー・クリントンの大統領選挙キャンペーンに参加し、その後、民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員(マサチューセッツ州選出)と命運をともにすることになった。ウォーレン議員は当時も現在も、ウォール街と暗号資産の取り締まりを主導している。
どうやらゲンスラー氏は、財務長官のポストを狙っているようだ。「ワシントンD.C.の噂では、ゲンスラー氏はオバマ政権時代から財務長官の座を狙っていたらしい。フォーチュン誌のほぼすべてのインタビューで、その憶測は繰り返し語られたが、彼の盟友たちは常にその話題を避けていた」と、記事を書いたレオ・シュワルツ(Leo Schwartz)氏とジェフ・ジョン・ロバーツ(Jeff John Roberts)氏は言う。
ゲンスラー氏の野心については、盟友も彼に批判的な人たちも意見が一致している。「ゲーリー・ゲンスラーは規制当局者を装った政治家」と、暗号資産業界を支援する民主党の下院議員リッチー・トーレス(Ritchie Torres)氏はフォーチュン誌に語った。
ルールの提案は多いが採択は少ない
議会から新たな法案が提出されないなか、ゲンスラー氏は金融セクターを規制するために既存の法律に目を向けてきた。そのため、暗号資産や気候変動に対する企業の責任報告方法など、さまざまな分野において、ゲンスラー氏指揮下のSECでは規則作りが相次いでいる。しかし、その多くは現在、訴訟やその他の難題で泥沼にはまっているようだ。
フォーチュン誌は次のように伝えている。
「規則を最終的にまとめることは、ゲンスラー氏の頭痛の種となった。米証券業金融市場協会によると、ゲンスラー氏は就任から30カ月の間に、直近の前任者2人に比べ、それぞれ62%、91%多くの規則案を提出した。その中身は、ブローカー・ディーラーが顧客に関する予測分析を利用する方法から、アメリカの取引システムの一部見直しに至るまで多岐にわたる。
しかし、このような取り組みには業界の意見を求めるためのコメント期間が必要であり、ゲンスラー氏の野心は金融界全体から反発を招いている。ブルームバーグは8月、ゲンスラー氏のルール採択の実績は過去数十年で最も遅かったと報じた」
一方、ゲンスラー氏の執行措置は、SECがターゲットにした企業が起こした訴訟によってしばしば挫折してきた。リップル社は、エックス・アール・ピー(XRP)を有価証券に分類しようとする動きを(ほぼ)撃退した。
現在、コインベース(Coinbase)は、違法な証券取引所を運営していると主張する別の訴訟を阻止できる可能性が高そうだ。フォーチュン誌は法律の専門家の言葉を引用し、ゲンスラー氏の積極的なアプローチが裏目に出る可能性があると述べた。「SECの管轄権などをめぐる訴訟は、もしそのような訴訟がSECの権限を抑制するような司法判決につながれば、ゲンスラー氏のより広範な試みを阻害する可能性がある」と、記事の著者らは書いている。
混乱を招く縄張り争い
ゲンスラー氏はCFTCを指揮し発展させたが、暗号資産に関してはその権限を制限しようとしている。ビットコインを除くほとんどのトークンは証券であると主張することで、ゲンスラー氏はこれらのトークンがどのように規制されるべきか、されるべきでないかを決定する責任をSECに負わせている。CFTCは、一部のトークンはより適切にはコモディティであるため、同機関が規制すべきであると主張している。
つまり、「コモディティ対セキュリティの議論」は暗号資産業界だけの問題ではなく、規制当局にとっても重要であり、しばしば「ゲンスラー氏の現在の組織と古巣の間の不和」につながっているとシュワルツ氏とロバーツ氏は指摘する。
CFTCのサマー・マーシンガー(Summer Mersinger)委員はフォーチュン誌の取材に対し、インサイダー取引で摘発されたコインベースの従業員のケースを挙げている。CFTCは、関係するトークンの一部がコモディティであるという理解に基づき、独自の訴訟を起こそうとした。SECも自らの管轄権を主張したため、マーシンガー氏は、どちらが管轄権を持っているのかが不明確なため、訴訟が却下されるのではないかと心配した。マーシンガー氏は、SECとCFTCの関係は現在、「かなり緊張している」と述べた。
CFTCのある職員はもっと強い表現でフォーチュン誌に語った。
「ひどい機能不全に陥った夫婦のようだ。我々の取り締まりと彼らの取り締まりの間の協力関係は基本的になくなってしまった」
参考資料:https://www.coindeskjapan.com/210326/
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Source: 仮想通貨情報局