コインベースとは
コインベース(Coinbase Global, Inc.)は、米国ナスダックに上場している暗号資産(仮想通貨)の取引プラットフォームです。
主に個人投資家の方々に向けて、仮想通貨の取引、ステーキングやステーブルコインUSDCoin(USDC)の金利獲得サービスなどを提供しています。さらに、大手の機関投資家やビジネスのパートナーには、仮想通貨の安全な保管や専門的な取引サービスも展開してます。
近年、コインベースは米国内での仮想通貨に関する規制環境の変動に対応すべく、グローバルな戦略を急ピッチで展開しています。特に2023年4月には、オフショア市場を新設し、機関投資家に向けた永久先物の取引も開始。また、次世代のインターネットとして注目される「Web3(分散型ウェブ)」に関連した金融インフラの提供を通じて、業界内でのリーダーシップをさらに強めています。
この記事では、コインベース・グローバルの取り組みや特徴について、詳しい情報をお伝えします。
目次
コインベースの基本情報
コインベースは、2012年に元Airbnbエンジニアのブライアン・アームストロング氏とゴールドマン・サックス出身のフレッド・アーサム氏(現在、大手VCパラダイムのマネージングパートナー)によって米国カリフォルニア州サンフランシスコで設立されました。
コインベースは一般投資家向けには、仮想通貨経済への気軽なアクセスを提供する窓口として、また機関投資家に対しては、新興のデジタル資産を取引するための流動性プールを備えたマーケットプレイスを提供しています。
同社は、使いやすさを重視したインターフェースとモバイルアプリの提供により、仮想通貨投資家からの高い評価を受けており、その取引量とセキュリティ、コンプライアンス体制から信頼を得ています。
開発者向けには、Web3に基づいたアプリケーションを構築し、また仮想通貨を安全に支払い手段として受け入れることが可能な技術とインフラを提供しています。
2021年4月14日、コインベースは米国ナスダック市場にてティッカーシンボル「COIN」として上場を実現しました。2022年末の時点で、認証済みユーザー数は前年の8900万人から1億1000万人に増加しています。
そして、2023年第2四半期末のデータによれば、顧客から預かっている仮想通貨の資産残高は約124億ドル(約1.76兆円)となっており、現金に関しての預かり資産残高も38億ドル(およそ5,400億円)に上ります。
コインベースはグローバル展開も進めており、カナダ、ブラジル、シンガポールなどの新たな市場にも進出。現在、100カ国以上でサービスを提供しています。
コインベースの主な事業
コインベースは、仮想通貨の取引、保管、開発の分野で包括的なサービスを提供しています。その中でも主要な事業を紹介します。
1. コンシューマー向け
仮想通貨取引サービスとして150種類以上の銘柄をサポート、現物取引、レバレッジ取引に対応する(23年8月時点)。
またコインベース Earnプログラムを通じてステーキングを含む、受動所得を得られるサービスを提供。イーサリアム(ETH)のほか、ADA、DOT、SOL、XTZ、ATOMなど100以上の資産をサポート。ユーザーは、DeFi金利やステーキング報酬を含む受動収益を得られる。
またコインベース Earnプログラムを通じてステーキングを含む、受動所得を得られるサービスを提供。イーサリアム(ETH)のほか、ADA、DOT、SOL、XTZ、ATOMなど100以上の資産をサポート。ユーザーは、DeFi金利やステーキング報酬を含む受動収益を得られる。
またコインベース Earnプログラムを通じてステーキングを含む、受動所得を得られるサービスを提供。イーサリアム(ETH)のほか、ADA、DOT、SOL、XTZ、ATOMなど100以上の資産をサポート。ユーザーは、DeFi金利やステーキング報酬を含む受動収益を得られる。
2023年5月には月額料金30ドルのプレミアムサービス「Coinbase One」を米国、英国、ドイツ、アイルランドを皮切りに34か国で開始。取引手数料ゼロ、アカウント保険などのユーザー特典を備える。
2. 機関投資家向け
Coinbase Custodyにて、機関投資家向けに仮想通貨を安全に保管するサービスを提供。Coinbase Primeでは取引、保管、資金調達を含む包括的なブローカレッジサービスを提供している。Coinbase Institutionalでは、オフショア市場の永久先物を含む、より包括的なプライムブローカレッジサービスを提供する。
3. Web3開発者向け
Coinbase CloudとしてAPI、SDK(ソフトウェア開発キット)、WaLLet as a Serviceやアイデンティティなどの基盤インフラを提供。開発者や企業、機関投資家は、Proof of Stakeネットワーク用ノードを構築してバリデーションに貢献できる。25以上のネットワークでノードの運営、及びステーキングが可能。
4. ウォレット
自己管理型ウォレット「Coinbase Wallet」はイーサリアムとEVM互換ネットワーク(Avalanche, Fantom, Polygon, Arbitrum, Optimismなど)、及びソラナに対応。各チェーンで発行されたトークンおよびNFTを保管・管理できる。コインベース口座との連携が可能で、90カ国以上でクレジットカードやデビットカードによる仮想通貨の購入をサポートする。
5. BASE (L2)
OP Stack(Optimism)をベースとする独自のL2。コインベースのdAppsのハブとして機能。1億1,000万人のCoinbase認証済みユーザーに対してWeb3へのゲートウェイとして機能することを目指す。Baseは、イーサリアムのセキュリティを継承しつつ、より速い取引スピードと低い取引コストをする。
6. USDCエコシステム
USDCは、1つのUSDCが1米ドルに等しい価値を保持するように設計されたステーブルコインである。コインベースとサークル社の共同事業体「Centre」によって発行される。現金等のリザーブ資産に裏付けられ、米国の規制を受ける金融機関が管理している口座に保管されている。コインベースの利用者には、アカウントで保有しているUSDCの額に応じて年利4%のリターンが自動的に提供される。
7. Coinbase Ventures(コインベース・ベンチャーズ)
Web3分野の企業に投資。そのポートフォリオは249件で、Digital Currency Group(200)、Pantera Capital(179)を抑えてトップ。(The Crunchbase Web3 Trackerより、23年7月18日時点)
売上分析
コインベースの収益構造は大きく2つに分かれており、仮想通貨の取引に関する手数料と、金利や仮想通貨ステーキングの報酬を中心としたサブスクリプションおよびサービス収入が主な柱となっています。特に、サブスクリプションおよびサービス収入は、前年と比較して倍増以上のペースで成長している点が注目されます。
2023年第2四半期(4月から6月)の決算データによれば、コインベースの取引高は、前年同期の2,170億ドル(31兆円)から、920億ドルへと大きく減少しています。そして、取引手数料収入も前四半期に比べて13%の減少となり、前年同期比では50%減の3億2,700万ドル(467億円)にまで縮小しています。
現状、機関投資家からの取引手数料収入は全体の5%程となっています。機関投資家の取引高は、前四半期と比較して37%減少、780億ドル(約11兆円)となっています。この背景には、市場のボラティリティの低下があり、取引所内のマーケットメイカーによる取引が低迷しているため、機関投資家の取引活動も低下しました。しかし、機関投資家向けのブローカーサービス「Coinbase Prime」の取引量は、増加を続けていると主張しています。
過去には業界平均を上回る取引手数料を設定していたコインベースも、最近はその手数料を見直し、競合他社との価格競争に応じてきています。具体的には、コインベースAdvanced Tradeの手数料はメイカーが0.00%~0.40%、テイカーが0.05%~0.60%の範囲です。対するBinance(グローバル)の現物取引手数料は、メイカーが0.00%~0.1%、テイカーが0.024%~0.1%となっています。なお、コインベースは簡易売買機能のスプレッドからも手数料を得ています。
その一方で、コインベースの金利収益が増加傾向にあります。コインベースはステーブルコイン「USDCoin」を支える準備金と、顧客に提供するビットコインを担保とした融資の利息を得ています。
第2四半期末のプラットフォーム上のUSDC残高は約18億ドルで、第1四半期末の12億ドルから増加、第2四半期のUSDCからの金利収入は1億5,100万ドル(約216億円)に達しています。
さらに、ブロックチェーン報酬はコインベースの第2四半期の純収入の約4%を占めており、ユーザーが仮想通貨ネットワークから得る報酬に対して、コインベースが15〜35%の手数料を取っています。
コインベースのステーキング対象銘柄の中で、イーサリアムは特に大きな割合を占めています。6月30日の時点でのETHの預託額は70億ドル(約1兆円)、そのうち22億ドル分は機関投資家からの預託となっています。
コインベースの機関株主
コインベース・グローバル(COIN)は、ビットコイン投資を希望する株式投資家にとって、ビットコインへの間接的なアクセスを提供するプラットフォームとして注目されています。この点で、米ナスダックに上場しており、15万BTCものビットコインを保有する企業、マイクロストラテジー(MSTR)としばしば比較されることがあります。
ドイツの投資銀行ベレンベルクの分析によれば、コインベースが2021年4月の米ナスダック上場から2023年3月まで、これらの2つの企業銘柄の相関係数は0.96と非常に高い数値を示しています。ただし、ビットコイン専門のマイクロストラテジーと、仮想通貨市場全体の規制環境の影響を受けやすいコインベースでは、基本的なビジネスモデルや立場が異なることを踏まえ、投資家の中には、これら2つの銘柄を組み合わせてリスクを分散する、いわゆるヘッジ戦略を採用する向きも見られます。
また、マイクロストラテジーの主要株主として、運用資産総額が世界トップクラスのブラックロックやバンガード・グループといった巨大な機関投資家が存在します。2023年の第一四半期の情報によれば、運用資産が4.5兆ドルを超えるフィデリティ関連企業がマイクロストラテジーの株を大量に購入していることも判明しています。
注目すべきは、これらの機関投資家はコインベースの株主でもあり、彼らがデジタル資産産業への関与を深めていることが伺えます。以下ではコインベースの代表的な機関株主を見てみましょう。
米国証券取引委員会(SEC)の四半期報告書(13F)によると、コインベースの最大機関投資家株主は、バンガード・グループで、彼らはコインベースの7.19%を所有しています。バンガード・グループは、運用総額が世界第二位の資産運用会社です。
次に大きな株主はアーク・インベストメントで、その主力上場投資信託であるARK Innovation ETF(ARKK)等を通じて、コインベースの発行株の6.30%を保有しています。ARKは、下落トレンドでCOIN株を蓄積した一方で、利益配分戦略に基づいて7月11日以降に同社はCOIN株を売買しています。
日興アセットマネジメントは4.61%を保有し、そのアメリカ子会社も4.44%を保有しています。日興アセットマネジメントは、マザーファンドの一つ「グローバル・フィンテック株式ファンド」にコインベースを組み入れています。同ファンドは、アーク社からの助言をもとに成長が期待されるフィンテック企業を中心に投資しています。
その他の主要な株主としては、ブラックロック(3.18%保有)やモルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント(1.36%保有)が挙げられます。また、米国の著名なテクノロジー起業家兼投資家であるマーク・アンドリーセン氏はコインベースの個人最大の株主で、会社の6.32%を所有しています。
特にブラックロックは、2022年8月に仮想通貨取引所のコインベースと提携。リスク管理システム「アラジン」を通じて、まずはビットコインに関する取引や保管(カストディ)、多岐にわたる市場データを機関投資家に対して提供することを公表しました。さらに、米現物ビットコインETFの申請を通じ、資産の保管、及び監視共有協定のパートナーとしてコインベースを指定するなど、ビジネス上密接にかかわっています。
COIN株価に影響を与える最新のトピック
現物ビットコインETF申請
暗号資産(仮想通貨)市場のピークアウトを機に、天井圏から大幅下落していたCOIN株価は、2023年以降は約1年ぶりの高値をつけるなど回復傾向にあります。
2022年の株価は最大-80%下落という厳しい状況でしたが、背景には金融市場の地合い悪化や暗号資産(仮想通貨)市場のバブル崩壊と低迷がありました。
2022年5月に発生したテラ(LUNA)ショックの影響で大手ベンチャーキャピタルThree Arrows Capital(3AC)が破綻。同年11月には、大手暗号資産(仮想通貨)取引所FTXやアラメダリサーチが相次いで破綻し、業界を揺るがしました。仮想通貨ファンドやレンディング企業の債務問題など、複数の難題に直面することとなったと言えるでしょう。
一方、2023年6月には世界最大手の資産運用会社であるブラックロックが、証券取引委員会に現物ビットコインETF申請を提出し、株価が上昇した場面もありました。このETFが承認されると、Coinbase Custodyが「iシェアーズ・ビットコイン・トラスト」の資産を保管する立場となります。
ブラックロックは、今回のETF申請において、SECがこれまで問題視してきた「現物ビットコインと規制市場との間の監視共有協定が不足している」という懸念点に対処するための新しいフレームワークを導入しています。その中で、コインベースは「監視共有協定」の重要なパートナーとして指名されています。
ブラックロックはこれまでに575件のETF申請をSECに提出しており、そのうち非承認となったのはわずか1件だけ。この実績を踏まえれば、今回のビットコインETFの承認可能性が高いと見る声が多く、それに伴い、コインベースの収益もさらに拡大するとの期待感が高まっています。
また、ブラックロックがビットコインETFの申請を行ったことで、複数の金融大手が一斉に、ビットコインの現物型上場投資信託(ETF)の認可を米国の証券規制当局に申請。その多くが、コインベースとの監視共有協定を結ぶ形となっています。
米SECによる提訴
米国証券取引委員会(SEC)との対立は今後のコインベースのビジネスに大きな影響を与える可能性があります。
SECは23年6月に、コインベースが無登録のブローカー・ディーラーとして営業しているとして提訴。これにより、追加のステーキングプログラムの停止命令やUSDCの利息収入による潜在的な収益損失の可能性などを想定する一部の市場参加者から、COIN株に対して否定的な見方があり、実際に株価が急落する場面がありました。
しかし、リップル社に対する2023年7月の裁判所の判決が、コインベースの展望を明るくしています。7月14日、リップル社が仮想通貨XRPをオープンな取引所で販売することは、連邦証券法に違反しないとの第一審判決が下りました。
これにより、暗号取引所のビジネスモデルに関する規制が明確化し、コインベースがSECとの法的係争で勝訴する可能性が高まったとの見方が広がっています。
総括
The street quant ratingsのバリュエーション分析によると、2023年7月18日時点のコインベースの株価は、他の銘柄と比較してもプレミアム価格での取引が行われています。具体的には、株価純資産倍率が4.42倍で、S&P 500指数の4.21倍とほぼ同じ水準です。これは、コインベースの株価が純資産に対して比較的高い評価を受けていることを示唆しています。
また、売上高株価比率(PSR)は、S&P 500の平均や同業他社の平均よりも高い数値を示しています。これは、投資家たちがブラックロックの現物ビットコインETF申請に対して前向きな見方をしており、コインベースの将来の成長や収益性に対する期待値が高まっていることを反映していると言えるでしょう。
参考資料:https://coinpost.jp/?p=476327
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Source: 仮想通貨情報局