暗号資産の未来をめぐって5年前に行われた賭け。まったく別の時代の話のように感じる。
2018年、米CoinDeskのカンファレンス「Consensus」で発表されたこの賭けは、期限が2023年5月に設定されていた。2018年というと、イーサリアムブロックチェーン上でDeFi(分散型金融)プロダクトが爆発的に増加した2020年の「DeFiの夏」よりも前。もちろん、2022年に崩壊した巨大な強気相場の前であり、FTXやテラ、セルシウスなどの破綻よりもずっと前の話だ。
だが、まったく重要性がないというわけではない。ビットコインマキシマリストのジミー・ソン(Jimmy Song)氏とイーサリアムの共同創設者ジョセフ・ルービン(Joseph Lubin)氏という、暗号資産の世界の両端にいると言える大物2人の間の賭けの中身と、その勝者は、昨年の惨状から立ち直りつつある暗号資産業界の現状と、メインストリームへの普及の見通しについて多くを語っている。
重要な分散型アプリケーションは出現するか?
ソン氏が2018年のConsensusのステージで、5年以内には重要な分散型アプリケーションは登場しないと述べた後、ルービン氏はソン氏の予想が間違っていることに「どれだけの金額」を賭けても構わないと発言。その後、さらに具体的な賭けの中身が設定された。
ルービン氏が勝つためには、イーサリアムブロックチェーン上で開発された5つ以上のアプリケーションが、2023年5月23日の期限までの12カ月間に少なくとも6カ月間、デイリーアクティブユーザー1万人、マンスリーでは10万人を維持する必要があった。デイリーアクティブユーザーは、単独のイーサリアムアドレスが行うオンチェーン取引と定義された。
つまり、ソン氏の表現を借りれば、いくつかのイーサリアムアプリケーションが、最小限の成功を収めたアンドロイドあるいはiPhoneアプリと同じ程度のユーザーを獲得する必要があった。
賭けは両者の握手で正式に成立した。
それで、どちらが勝ったのだろうか?
5年後の2人の回答
「定義を明確にしなかったので、私にはわからない」と、ソン氏は先週、CoinDeskの取材に答えた。ルービン氏も誰が勝ったと思うかについて語らなかった。
「ジミー・ソンとジョセフ・ルービンのビットコイン vs イーサリアムの賭けは明日で終了!
裁定者は決まっていたのか?」
当初の合意について、ソン氏もルービン氏も記憶が曖昧なのかもしれないが、CoinDeskは公開されていた条件をもとに、どちらが勝ったかか判断を試みた。
2つのブロックチェーンデータ企業──アルテミス(Artemis)とナンセン(Nansen)──によれば、5つの分散型アプリ(Dapp)が、ここ5年間で、ルービン氏の勝利に必要最低限な条件を満たしていた。しかし、これら5つがDappに当たるかどうかには、議論の余地があるかもしれない。
つまりルービン氏が勝ったとしても、かろうじての勝利であり、圧勝ではなかった。そして人によっては、同氏が負けたと判断する可能性がある。
イーサリアムエコシステムのTVL(Total Value Locked:預かり資産)を、2021年11月に1000億ドル超えまで押し上げた前回の強気相場でのDapp開発をめぐる盛り上がりを考えれば、この結果は直感に反するが納得できる。DappRadarによれば、現在イーサリアムのDappの数は14万以上。そのほとんどが小規模なものだ。
「結果は、業界が未成熟なことを示していると思う」と賭けの直後に両者をゲストとして自らのポッドキャストに登場させたローラ・シン(Laura Shin)氏は語った。
5年前の見通し
賭けが行われた5年前、分散化された方法で、自動的にさまざまなことを実現するスマートコントラクト向けプラットフォームとして機能するブロックチェーン、いわゆる「プログラマブル・マネー」というイーサリアムの主要なイノベーションは、まだ未成熟だった。ソン氏もイーサリアムの将来に確信は持てなかった。
「奇跡が起こって人気のDappが登場したとしても、中央集権型プラットフォームではるかに安価で高速、スケーラブルで管理もアップグレードもしやすいバージョンを開発して、もとのDappを完全に打ち負かすことができる」とソン氏は2019年のConsensusで語っていた。
ルービン氏も当時、次のように語った。
「ジミー(・ソン氏)の主張は、ブロックチェーン上に大規模で重要なアプリケーションが登場することはなく、唯一意義のあるブロックチェーンはビットコインというものだった。(中略)私はビットコインは素晴らしいと考えている。そして、ビットコイン上には限られたユースケースが存在し、それも素晴らしい。私たちはビットコインが大好きだが、分散型アプリケーションも本当に便利なものだと考えている」
条件がそろえば、ソン氏はルービン氏に81.08ETHを支払うことになっていた。ソン氏が勝った場合は、69.74BTCを支払うことになっていた。どちらも当時は50万ドル相当だったが、現在のドル換算では、ルービン氏は150万ドル(約2億1000万円、1ドル140円換算)、ソン氏は190万ドル(約2億6600万円)を受け取ったことになる。
結果判定
アルテミスとナンセンによると、賭けで設定した期間にデイリーアクティブユーザー1万人とマンスリーアクティブユーザー10万人の両方を超えたアプリケーションは、サークル(Circle)、オープンシー(OpenSea)、テザー(Tether)、ユニスワップ(Uniswap)、ラップド・イーサ(wrapped ETH:WETH)の5つだった。
メイカーダオ(MakerDAO)、0x、Gnosis Safe、チェーンリンク(Chainlink)、メタマスク(MetaMask)、1inchは、マンスリーアクティブユーザーは10万人を超えていたものの、デイリーアクティブユーザーが1万人に満たなかった。
しかし、ルービン氏の勝利宣言を行う以前に、Dappとはなにかについて暗号資産コミュニティで意見が分かれていることを忘れてはならない。
Dappとは何か?
ステーション・ラボ(Station Labs)の共同設立者マインド・アピベッサ(Mind Apivessa)氏は「私はWETHをアプリケーションとは考えていない。WETHはERC-20トークン規格であり、Dappでのイーサリアム取引を実行しやすくするために使われている」と語った。
ヘッジー・ファイナンス(Hedgey Finance)のCEO、リンジー・ウィンダー(Lindsey Winder)氏も同様に次のような疑問を呈した。
「スマートコントラクトはデフォルトでDappではない。(中略)私の考えるDappは、コードを使わずにスマートコントラクトとのやり取りを可能にするインターフェース。もし私がユニスワップのようなサービスを使ってイーサリアムをラップしたりアンラップすれば、それはDappを使っていることになるが、スマートコントラクトで直接イーサリアムをラップしたりアンラップするのであれば、Dappを使っていないことになる」
さらにサークルとテザーもDappにはあたらないとナンセンのデータジャーナリスト、マーティン・リー(Martin Lee)氏は考えている。
前述のポッドキャスト運営者のローラ・シン氏は「サークル、オープンシー、テザーをDappと呼ぶ人はいないと思うので、ジミー(・ソン氏)の勝ちのようだ」と語った。しかしいずれは、この賭けの基準を満たす十分な数のDappが登場する可能性があるだろうと続けた。
アルテミスのCOOジミー・ジェン(Jimmy Zheng)氏は、5つすべてがDappにあたると考えており、次のように述べた。
「基本的に、ブロックチェーンプラットフォーム内の実際の最小単位が、他のコントラクトやアドレスがやり取りできるスマートコントラクトであると考えると、アプリケーションの定義はコントラクトであること。その観点から見ると、WETH、オープンシー、サークル、テザーなどのアプリケーションとやり取りする多数のアドレス/コントラクトが存在するという意味で、それらはDappだ」
アピベッサ氏は、wrapped ETHをアプリケーションとは考えていないが「WETHはイーサリアムを特定のアプリケーションと互換性を持つものにすることから、アプリケーションと分類できないこともない」と認めた。
エピローグ
ソン氏が賭けに投げかけた包括的なテーマは、イーサリアムネットワーク上に重要なアプリケーションが存在できるかどうかにかかっていた。そして実際に、いくつかのそのようなアプリケーションが存在することは明らか。
アルテミスとナンセンのデイリーとマンスリーのアクティブユーザーを見てみると、賭けの基準は満たさないが、よく使われているアプリケーションがイーサリアム上に数多く存在していることがわかる。
ルービン氏は2019年、賭けの基準となったアクティブユーザーを確保できていなくても、エコシステムには問題ないだろうと語った。
「私が賭けに負けても、イーサリアムは非常にパワフルなものになる可能性がある」(ルービン氏)
どちらが賭けに勝ったのかにかかわらず、2大ブロックチェーン間の長年のライバル関係は、まだまだ決着がつかないようだ。
参考資料:https://www.coindeskjapan.com/187380/
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Source: 仮想通貨情報局