忍耐は美徳と言われる。しかし市場、少なくとも日常的に耳にする市場の一部や参加者はすばやく利益を上げることが好きだ。長期投資家の方が夜はぐっすりと眠れるかもしれないが、注目はあまり浴びない。
しかし、暗号資産の開発に関しては忍耐が報われている。急速な成長という大きな約束を掲げてベータ版をローンチしたネットワークは設計を急いだせいで低迷している。
ビットコインブロックチェーンなど、ゆっくりと自然に成長してきたネットワークは激しいストレステストや強力なライバルの存在にもかかわらず、時間の試練に耐えてきた。そのようなゆっくりと成長するネットワークでさえも、ユーザー数の増加と世界的な認知という点で大きな前進を見せている。それでも、この新しいテクノロジーの成長と世界的な理解は本格的にスタートしたばかりだ。
暗号資産エコシステムの明確な実用性の欠如を(世界的にその逆を示す証拠があるにもかかわらず)批判する人たちがいる。彼らは「まだ初期段階にある」という言い訳の陰に隠れていると、暗号資産業界を批判する。
彼らは通常、わずか数年の進化の後に明確で目に見える形の結果を求める伝統的市場の精神に染まった人たちで、そのような結果が実現していないことは、この先も決して実現しないという証拠だと考える。最近では、誰かがインターネットは軌道に乗るまでにさほど時間がかからなかった、と発言するのを聞いた。
インターネットとの対比
それは正しくない。現在の広大なインターネットネットワークに先立つARPANETが「最初のメッセージ」を送ったのは1969年。htmlと初の世界的にアクセス可能なウェブサイトが登場したのはそれから22年後のことだ。その7年後には、著名な経済学者がインターネットが重要性を持つ可能性は低いと主張していた。
一方、暗号資産は2009年の初のビットコイン(BTC)取引の処理からスタートした開発プロセスのわずか14年目に過ぎない。インターネットの「最初のメッセージ」にあたる初の取引から22年経った2031年に業界がどうなっているのか、それからさらに7年後にどんな批判を受けているのか想像してみて欲しい。ブロックチェーンはまだ始まったばかりだ。
さらなる証拠として、暗号資産関連のニュースの見出しをざっと見てみると良い。どの日を選んだとしても、既存のブロックチェーンの進化、新しいブロックチェーンの設計、ユースケースの議論などが複数見つかることは間違いない。
最も古くからあるブロックチェーンのビットコインでさえ、いまだに進化している。コミュニティでは現在、ビットコインブロックチェーンをNFTに使うべきかどうかの議論が激化している。一方には、進化の力、実験、管理者の不在を信じる人が、他方には、「幼稚な画像」がネットワークを混雑させ、本来の「決済」というユースケースが損われると心配する人たちがいる。
さらに、ビットコインが決済に使われることは決してないと言い張る少数派の人たちもいる。しかし実際には、新興市場、さらにそれほど新しくない市場においても、すでに多くの人たちが決済に使っている。
つまりビットコインでさえも、その技術的潜在能力の検証、拡大が続いており、その実用性はいまだに議論されている。
イーサリアムブロックチェーンなど、他の大型ネットワークはさらに流動的な状況にある。その機能を変えるアップグレードに、アドレス管理などの基本的な機能の抜本的な変更、レイヤー2の急速な成長、セキュリティやプライバシーテクノロジーの実験の激化、新しいアプリケーションの登場、既存のアプリケーションの修正、野心的な「イーサリアムキラー」の出現など…。
技術革新のサイクルで考える
アプリケーションどころか、技術標準について議論している段階なのに、初期ではないことなどあるだろうか? 歴史家で経済学者のカーロータ・ペリッツ(Carlota Perez)は、技術普及のサイクルを次のように分類している。
まずはインフラが開発される導入段階。次にテクノロジーが広範に普及する展開段階が続く。
明らかに私たちは広範な普及からほど遠い。その意味についてすら、合意できていない。導入の初期段階にあるだけでなく、断片化したグローバルステージの上で、新興のユースケースを追求する断片化した取り組みによって、新しい技術基盤を確立しようとしている。
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さらに、規制当局からの強い抵抗を受けている。これは歯がゆいが、理解できるものでもある。ブロックチェーンテクノロジーは、何かの製品を改善したり、人の移動を高速化させるものではない。
その主要な目的は、取引方法を変革することであり、それゆえにブロックチェーンテクノロジーは既存の(金融の)管理者から脅威と受け止められている。金融はゆっくり変化すべきことは間違いない。リスクにさらされるものが大き過ぎるからだ。しかし変化への抵抗は社会的結束に対する実質的な脅威にもなる。
歴史をある程度理解している人なら、私たちの文明は、抜本的で新しい技術イノベーションが牽引するサイクルで動いていることを知っている。ブロックチェーンテクノロジーが新しいサイクルの始まりを告げるか、インターネットによって始まったサイクルを土台に進み続けるかはまだわからない。私は個人的には前者だと考えているが、どちらにしてもスタートからわずか14年では、まだまだ始まったばかりだ。
悪事やコード検証の甘さを弁解することに「初期」という言い訳を使っているという批判は正しい。エコシステムが未熟だからといって、より良くできないということではない。
しかし逆に、努力が足りない、成功していないと私たちを外から批判する人たちを批判することができる。動的であることよりも静的であることを優先した既得権益や、意義のあることよりも便利さを優先する既得権益を批判できる。
初期段階のテクノロジーに投資するチャンス
ベンチャーキャピタリストのマーク・アンドリーセン(Marc Andreesse)氏は2014年、当時のビットコインの状態を1994年のインターネットの状況になぞらえた。私は彼の分析に同意できない。この発言当時、ビットコインはまだ何になりたいか、どうすれば便利なものになれるかを見極めている段階で、いわば1980年代のインターネットに近かった。
そして多くの人は、初期のインターネット企業に投資できなかった。そのようなチャンスはベンチャーキャピタリストと適格投資家に限られていた。
しかしブロックチェーンエコシステムによって、初期のチャンスへの投資は、インターネットが使える人なら、世界中の誰にでも開かれることになった。しかも1990年代とは異なり、テクノロジーを象徴する容れ物や包装紙に投資するのではなく、テクノロジーそのものに投資できるようになった。
いつになったら初期段階ではなくなるのだろうか? メインストリームでの報道が資産の値動きと同じくらい、普及や新しいアプリケーションについてのものになったとき。テクノロジーが暗号資産に興味を持った人を怖気づかせることがなくなったとき。規制当局が新しい金融アプリケーションを脅威ではなくチャンスと見るようになったとき…。
現時点では、そうした日ははるか遠くに感じられるかもしれない。しかし、そんなことはない。5年後、10年後、20年後だとしても、暗号資産エコシステムは諦めたり、減速することはない。
永続的な何かを開発した人なら誰でも、大規模な忍耐は勝利を収めることを知っている。そして、変化はまだ先のように感じられるが、気がついたら突然、すばやく起こっているものであることを。
参考資料:https://www.coindeskjapan.com/177033/
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Source: 仮想通貨情報局