新たに株式投資を始めるにあたり、どこから情報を集めるのかは重要です。信頼できる情報源に基づいて投資判断を行わなければ、利益を出すのが難しいことはもちろん、大きな損失をもたらすリスクもあります。
とはいえ株式投資の情報源は国内だけでも無数に存在し、高品質な情報源を特定するのは骨の折れる作業です。そこで、まずは株式投資のバイブルとも呼ばれ、多くの投資家から信頼されている「四季報」という情報誌を参照するところから始めてはいかがでしょうか。
しかし四季報のボリュームは多いため、株式投資をこれから始める人にとってはガイドなしに使いこなすのは敷居が高いでしょう。
そこで本記事では、株式投資における重要な情報源となる四季報の概要や読み方・注意点などを詳しく解説します。
1. 四季報とは株式投資のバイブル
四季報(会社四季報)とは、東洋経済新報社が発行する上場企業についての株価や業績がまとめられた情報誌です。国内の上場企業は3,700社以上にものぼりますが、四季報の作成にあたっては各企業に担当者が付き、常に動きを確認しています。そのため圧倒的な情報量と網羅性があり、株式投資のバイブルともいわれています。
もちろん四季報以外にも上場企業や投資に関する情報をまとめた情報誌はいくつかありますが、2期分の予想をしているのは四季報のみ。より先を見据えた視点が得られるため、個別銘柄投資の際にも有利です。
ちなみに、金融機関や海外投資家が日本企業の業績を確認するのに用いるほど、四季報の予想は参考にされています。そのため株式投資を始めるなら、四季報の読み方や特徴、活用方法を押さえることが必須といえるでしょう。
1-1. 年に4回発行される四季報の基本
四季報は以下のように、年に4回発行されます。
- 新春号
- 春号
- 夏号
- 秋号
新春号は9月の中間決算の情報を基に発行されます。今期の情報が出揃いつつあり、おおよそどの程度の売上があるのか、営業利益はどのくらいかなど着地点が予想できます。
期初に立てられた売上や利益の予想から大きく上振れ・下振れする企業も出始めるため、サプライズ銘柄を見つけられるでしょう。
春号は第3四半期(10月から12月)決算後に発行されます。春号の特徴は、ほぼ決算の情報が出揃っている今期だけでなく、来年度の予想にも触れている点です。期待できる銘柄を先回りして見つけるのに役立つでしょう。
夏号は6月に発行されます。前年度決算の実績を網羅しており、それを基に記者が中立的な立場からコメントを残しています。
秋号は4〜6月の第1四半期業績を基に作成されるものです。新たな期のスタートから3ヶ月経過し、夏号での予想と大きくかけ離れた業績を残す企業もちらほらと出始めるため、徐々にサプライズ予想も見られるようになります。
1-2. 紙面版とオンライン版がある
ちなみに、四季報には紙面版とオンライン版があります。
株価や企業業績、市場動向は日々変化しています。常に最新の情報に触れたいものですが、紙面版の四季報は年4回のみ発行のため、常に情報の鮮度を保てるわけではありません。
その点「四季報オンライン」なら、四季報の編集部が提供する最新の情報を常に取得することが可能です。過去に発行された四季報のバックナンバーも読めるため、情報量は申し分ありません。
検索機能付き、スマホアプリとの連動も可能で、2,000ページにも渡る紙面版の四季報と組み合わせることで、情報収集の効率が高まるでしょう。
四季報オンラインは無料会員でも十分便利な機能が使えますが、有料会員になれば登録可能な銘柄数や使用できる機能が大幅に増えます。紙面版の四季報の発行前に先取りで情報を見るサービスも利用できるため、株式投資に本格的に取り組みたい方にとっては魅力的なサービスでしょう。
2.仮想通貨における情報収集と四季報の違い
続いて、四季報を使った情報収集は、仮想通貨におけるそれとはどういった点に違いがあるのか比較して解説します。
仮想通貨は、リアルタイムで情報が得られるTwitterやDiscord、公式サイトなど、インターネットを使った情報収集がメインです。
株式投資でもネット上で調べられる情報も多々ありますが、バイブルである「四季報」は2023年現在でも活用されています。紙媒体で調べることとネットを使って調べることには、いくつかの違いがあります。
仮想通貨との情報収集の主な違いは以下の4点です。
- リアルタイムでの会社の業績を表すものではない
- 関係する部分を効率的に読む
- 予想が当たるとは限らない
- 巻頭の見出しを読み飛ばさない
それぞれの違いを詳しく見ていきましょう。
2-1.リアルタイムでの会社の業績を表すものではない
情報誌の四季報に記載されている情報は、基本的に発行時点から3ヶ月前の企業成績です。そのためリアルタイムでの会社の業績を反映するものではないことに注意しましょう。
例えば6月に発行される夏号は、3月に出される企業実績を考察したものです。もちろん参考になる情報ですが、現在の企業状況を表しているわけではありません。
現状を正確に把握したい場合はチャートや経済ニュースを見るなどして、適宜自分で情報を集めるようにしましょう。
なお、四季報オンラインの場合は、上記の限りではありません。
2-2.関係する部分を効率的に読む
前述のとおり、四季報は非常にボリュームの大きい情報誌です。
そのため四季報を読む際は、まずは関係する部分やポイントとなる部分を中心に読み進めるなど、読み方を工夫することが大切です。注目している企業や業界があれば、その部分に絞って読むのもいいでしょう。
四季報は2,000ページにも渡るため、そのすべてを読むことは現実的ではありません。
重要なのは、必要な情報をピンポイントで集めることです。四季報を読むのに慣れてきたら、徐々に情報収集する範囲を広げていきましょう。
2-3.予想が当たるとは限らない
どれだけ信頼のおける情報誌と言えど、四季報での銘柄や業界の今後の予想は、必ずしも当たるとは限りません。
四季報には、銘柄や市場について記者の予想が書かれたコメント欄があります。これはあくまでも予想であるため、当然ながらその情報を鵜呑みするのはおすすめできません。
実際、1950年3集四季報のトヨタについて書かれた予想を大きく外したことでも知られています。
四季報で得られる情報は参考にはなりますが、あくまで参照程度にとどめ、企業や市場の動向を自身で確認したうえで最終的な判断を下しましょう。
2-4.巻頭の見出しを読み飛ばさない
四季報のメインは企業の詳細な情報をまとめたページにですが、意外と重要度が高いのが「巻頭の見出し」です。
例えば巻頭には「【見出し】ランキングで見る業績トレンド」というトピックがあります。このトピックは、過去4号を含めた5号分の見出しランキングを1位から15位までリストアップしたもの。
株価は、今後の予想や期待を反映して推移することが往々にしてあります。
見出しの中に「上振れ」「増配」「最高益」などのようなポジティブなワードが多い場合は、すでに株価が高いケースが多く、高値づかみしてしまうリスクもあります。
反対に「大幅減益」「続落」「赤字」のようなワードが多い場合は、株価が底値に近いことが考えられ、その後「急反発」や「黒転」といったポジティブなワードに繋がることもあるため、安値で保有できる可能性が高まります。
ただし、債務超過に陥っていたり、3期以上赤字が続くなど倒産リスクの高い会社には気をつけましょう。
また、同様に冒頭にある「業種別業績展望」には今後の業種ごとの売上高や営業利益、来季予想がまとめられています。前年比増減率がプラスの業界は赤字で表記されているため、ひと目で好調な業界を判断できます。
3. 四季報の読み方を項目ごとに解説
企業の情報を載せたページは、会社の情報や株主、財務、配当、チャートなど全12ブロックに分けられます。さまざまな情報が羅列されているため、どのように情報収集するのが効率的かを判別するのは簡単ではありません。
そこで続いては、四季報の読み方を、以下の項目ごとに解説します。
- 会社情報
- 株価や配当
- 会社の今後の予想
- 財務状況
- 過去の株価や資本の動き
それぞれの項目について、12ブロックの中からどこに着目すればいいのか見ていきましょう。
3-1. 会社情報
個別銘柄への投資は、投資する会社への理解が欠かせません。業種や事業内容、会社規模といった基本情報を把握しましょう。
会社情報を把握するには、「業種」「社名・事業内容・住所」「従業員」「仕入先」「取引先」の項目を確認してください。業種や従業員の平均年齢・平均年収から会社の規模を推測できます。
仕入先や取引先の情報も知っておくと、どのような会社と関係があるのかも確認でき、収益の安定性などを推し量る要素を得られます。
3-2. 株価や配当
株価を確認するには、ページ上部にある株価チャートを見ましょう。需給や業績に応じて、どのように株価が変化しているかを確認します。
ただし、先述したようにリアルタイムの情報を反映しているわけではないため、最新の情報に関しては適宜自分で収集する必要があります。
さらに、「配当」の項目には株主が受け取る、もしくは受け取った額が載っています。インカムゲインを狙った投資スタイルを実践したい場合は、本項目の株主への還元額に関する情報が役に立つでしょう。
3-3. 企業の今後の予想
企業の今後の予想は、四季報最大の特徴ともいえる「業績数字」や「業績記事・材料記事」から確認できます。
業績数字は業界担当記者への取材を元にしたオリジナルの予想です。売上高や営業利益、純利益などが記載されており、業績記事にて解説されています。材料記事は、市場動向に基づいた企業の経営課題や新商品について書かれている項目です。
また株価指標から「予想PER」の確認もできます。PERとは株価が1株あたりの純利益の何倍になっているのかを表すもので「株価÷1株あたりの純利益(EPS)」で算出されます。PERは株価が割安か割高かを示す指標であり、一般にPERが小さいほど割安の銘柄です。
ただ、これらはあくまでも予想に過ぎません。コメントを判断材料に追加で情報収集を行い
、最終的には自らの意志で決断することが大事です。
3-4. 財務状況
企業の経営が安全に行われているのか、将来性の有無などを把握するには「財務」の項目を活用します。本項目には企業の総資産だけでなく、返済不要の自己資本の総額や利息を付けて返済する必要のある有利子負債も確認でき、企業の経営状況に関して総括的な情報を得られます。
この際、「ROE」もあわせて確認するのがおすすめです。ROEとは自己資本利益率のことで「当期純利益÷自己資本×100%」で算出され、ROEが高いほど自己資本をうまく活用して利益を挙げていることを意味します。
また「キャッシュフロー」の項目も企業の財務状況を把握できる一つの指標です。仕入れから販売までの営業活動全体を通した営業キャッシュフローがマイナスになっていると、支出が上回り経営業績が芳しくない状態である可能性があります。設備投資や先行投資などで一時的にマイナスになることはあるものの、長期でマイナスが続いている場合は注意しましょう。
3-5. 過去の株価や資本の動き
過去の株価の動きは「株価推移」を見れば分かります。高値や安値を確認し、株式チャートと照らし合わせると、投資すべき銘柄かどうかの判断に役立つでしょう。
株式分割や株式併合、増資などは「資本異動」の項目からチェックできます。増資による株価の低下や株式消却による株価の上昇のように、資本異動は株価に影響を与えることがあるため、見逃せない項目です。
4. 四季報はミクロ・マクロなトレンド把握に活用する
四季報を活用すれば、個別銘柄や一つ一つの企業業績などのミクロな視点だけでなく、市場全体の動きを見て予想を立てるなど、マクロな視点から包括的に見れます。
ミクロ・マクロのトレンド把握に四季報を活用する方法を、以下の2点に絞って解説します。
- 株価が割安な企業を見つける
- 成長が予測される企業や産業を見つける
それぞれどのように活用できるのか見ていきましょう。
4-1. 株価が割安な企業を見つける
株式投資の基本は「安く買って、高く売る」です。そのためには、株価が割安な企業を見つける必要があるでしょう。
四季報には、予想PERと実績PERが記載されているため、株価が割安な企業の発掘に役立ちます。業種別(セクター)によっても平均PER水準が異なるので注意が必要です。
予想PERは、2期分のPERを予想したものです。これから成長が見込まれる企業の場合、2期目の予想PERが安くなる傾向にあります。しかしあくまでも数字は参考程度にし、マーケットの動向や競合他社との比較を基に投資するかどうか判断しましょう。
一方の実績PERには、過去3期分のPERが「高値平均」「安値平均」として記載されています。それぞれ過去3期分の最高PERの平均、最低PERの平均を表すものです。予想PERが高値平均に近づいているなら売り時に近づいており、反対に安値平均に近づいていればチャンスだと捉えられます。
4-2. 成長が予測される企業や産業を見つける
業績と株価は連動していることが多く、売上高や営業利益が右肩上がりに上昇している銘柄は有望です。PERがすでに高かったとしても、今後さらに株価が続伸する可能性もあります。
業績の項目を見て過去の業績と比較しながら、売上が年々伸びているのか確認してみましょう。
またマーケットの動きや今後の企業の業績を予想した業績記事や材料記事も、成長が予想される企業や産業を見つけるのに役立ちます。
5. 四季報をマスターして相場を読める投資家に
株式投資を始めるにあたり、正しい情報を集めることは非常に大切です。株式投資については多くの情報源がありますが、四季報は金融機関や海外投資家が日本企業の業績を確認するのに用いるほど圧倒的な情報量と網羅性があります。そのため株式投資で利益を得るなら「株式投資のバイブル」と呼ばれる四季報を使いこなすことが必須です。
ただし四季報は膨大な情報量であり、これから株式投資を始める方が予備知識無しで使いこなすのは敷居が高いでしょう。本記事の内容を参考にポイントを押さえた上で、株価が割安な企業や成長が予測される企業や産業の予測に役立ててみてください。
参考資料:https://coinpost.jp/?p=446747
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Source: 仮想通貨情報局