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「安定した通貨」という幻想【オピニオン】

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イーサリアムファンの中には、ツイッターのアカウント名にコウモリとスピーカーの絵文字を入れている人たちがいる。これは、大規模システムアップグレードの「Merge(マージ)」によって、イーサリアム(ETH)が「超(ultra)安定した(sound)通貨」になるという考えに支持を表明するためのもの。

コウモリは暗闇で飛ぶために超音波を使うところから来る、なかなか賢い言葉遊びだ。しかし、Mergeによってイーサリアムが超安定した通貨になるとは、どういうことだろう?

この疑問に答えるためには、まず次の疑問の答えを見つける必要がある。超安定した通貨とは何だろう?

超安定した通貨について考える前に、ただの安定した通貨から話を始める必要がある。ちなみに安定した通貨は時に、ハードマネーと呼ばれる。逆に、安定しない通貨はソフトマネーだ。

不安定なユーロとポンド、ミルクシェイク

安定した通貨の定義は、明確にはなっていないと認めざるを得ない。それでも一般的に受け入れられている定義は、信頼でき、安定した価値の保管手段として機能する通貨となるだろう。その延長で、安定した通貨は購買力を維持するはずである。今日1ドルで1杯のミルクシェイクが買えるなら、明日になっても、いつになっても、1杯(あるいはそれ以上)のミルクシェイクが買えなければならないのだ。

不安定な通貨はその逆だ。安定した価値の保管手段として機能しない通貨である。ソフトマネーはその価値が予期せず変化し、他の通貨に対して価値を失っていくことが見込まれる。

不安定な通貨の動きの例として、ユーロと英ポンドが参考になる。どちらもここ2年で、米ドルに対して価値の15%以上を失った。

ドルに対するユーロ(橙)とポンド(青)価格の推移
出典:TradingView

何を言おうとしているか分かってきた人もいるかもしれない。そう、ドル・ミルクシェイク理論だ。私もつい最近知ったばかりのこの理論は、ここ1週間ほど、以下のようなチャートを伴って、金融系のメディアで広がっている。

主要通貨の過去1年の価格推移
出典:TradingView

ドル・ミルクシェイク理論を簡単に説明しよう。

債務をベースとした法定通貨はすべて、時間と共に価値が下がる。しかし、世界の準備通貨、そして大半の債権の基盤となっている米ドルは、他のものに比べて価値低下のスピードがゆっくりなため、価値がドルに集まってくる。

「ミルクシェイク」の部分は、ドルが他の通貨のミルクシェイクにささったストローのようなもので、準備金通貨としての地位のために、資本投資を吸い上げていく、ということだ。

ここ1年で、米ドルはカナダドル、オーストラリアドル、ユーロ、ポンド、日本円を凌いでおり、この理論は現実になっているようだ。

現在の定義で言えば、ドルが安定した通貨と言えそうだ。他の主要通貨全てに対して、価値を高めてきているのだから。

ただし…

ドルは、その購買力を維持してはいない。ミルクシェイクつながりで、1994年公開の映画『パルプ・フィクション』の中で、ミルクシェイクが5ドルもすることに登場人物が衝撃を受けるシーンを思い出してみよう。映画の舞台はロサンゼルス。2022年にロサンゼルスでは、5ドルのミルクシェイクなんて当たり前だろう。

まあとにかく、暗号資産に話題を戻そう。

イーサもビットコインも超安定した通貨ではない

イーサが超安定した通貨だという主張には、2つの根拠がある。

まず、ビットコイン(BTC)は供給に上限があり、発行スケジュールが予測できることから、安定した通貨であるというナラティブ。次に、Mergeによって、イーサの供給量は時間とともに減少していくかもしれない、という考えだ。

そして、イーサの供給量に「上限」があり(厳密には上限があるのではなく、発行量が「正味ゼロ」になる)、その供給量が減るのに十分なイーサをネットワークが焼却するかもしれないため、論理的な結論は1つしかない。ビットコインが超安定した通貨ならば、Merge後のイーサは超安定した通貨なのだ。

ただし…

ビットコイン、またはイーサが安定した通貨であるという根拠がないのだ。安定した通貨は、時間が経っても安定して価値を保管できるはずだ。確かにここ5年ほど、ビットコインとイーサは最大340%値上がりし、素晴らしい価値の保管手段となってきた。しかし、直近1年では、最大53%の値下がりだ。

過去5年間のBTC(青)とETH(橙)価格の推移
出典:TradingView

長期的に価値を保つことができれば、その通貨は安定している。それが定義だ。通貨の供給量が決まっていたり、デフレ的な発行スケジュールを持っていることは、安定した通貨を意味しない。

ビットコインの供給上限が約2100万と設定されていることや、発行スケジュールが分かっていることは、関係ない。長期的に安定して価値を維持できなければ、安定した通貨ではないのだ。

ゴールドは?

通貨資産としての金(ゴールド)には興味がないと、はっきり申し上げておこう。正直言って、分割可能、持ち運び可能という点でひどく劣っているので、通貨としてはかなりお粗末なものだと思っている。しかし、現時点では、認めたくはないが、安定した通貨の最も優れた例かもしれない。

投資家たちから聞いた格言に、「ゴールド1オンスで常に、それなりのスーツを買うことができた」というものがある。これが真実であるかを検証するのにあまり時間を費やしたくないのだが、スーツを買ってきた個人的な経験から言えば、1オンスのゴールドをドル換算した金額を支払っていれば、私が買ったものよりももっと良いスーツが買えていただろう。

しかし、他のものを買う場合ならどうだろう?1杯のコーヒーは何オンスのゴールドに相当するのだろう?トヨタのカムリは?ランプは?さらに、ベネズエラなどの例外を除いて、金塊や金貨、金箔での支払いに対応してくれる業者を見つけるのは至難の業だ。さらにそのゴールドが金メッキの銅ではなく、本物のゴールドだとどのように証明するのだろう?

こうなると、安定した通貨に必要な条件を2つ追加するべきだろう。簡単に検証できて、幅広く受け入れられること。つまりゴールドではない。さらに言えば、安定した通貨は、通貨であるべきなのだ。ということは現在、安定した通貨は存在しない。

では超安定した通貨は?そんなものも、存在しないのだ。

参考資料:https://www.coindeskjapan.com/161781/ 

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Source: 仮想通貨情報局

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