1992年発表のニール・スティーヴンスンの小説『スノウ・クラッシュ』で初めて使われたメタバースという言葉。大まかに言うと、『レディ・プレイヤー1』や、ロブロックスやフォートナイトなどのゲームを彷彿とさせるような、バーチャル世界を意味する。
人々は、完全に機能する実世界の経済を軸にしたデジタル資産を取引、管理することで、アバターを介してメタバースの中に住むことができる。
メタバース市場の細かいところはまだ、抽象的な部分もある一方、メタバース内のインフラや経済の基盤のようなものとして、NFT(ノン・ファンジブル・トークン)の力が増している。人々はメタバース内でNFTを使い、バーチャル不動産やイベントチケット、アバターなどのデジタルアイテムを購入しているのだ。
メタバースでのNFTと不動産投資
バーチャル地主
前述の通り、メタバース内でのNFTの用途の1つが、ゲームプラットフォーム「ザ・サンドボックス(The Sandbox)」内での不動産「LAND」など、バーチャル不動産の購入である。このような場合、譲渡証書代わりにNFTを使って、バーチャル世界の中での土地の所有権を表すのだ。
ザ・サンドボックスのLANDは、ゲームの世界の中の約300平方フィート(約28平方メートル)に当たる。別のプラットフォーム「ディセントラランド(Decentraland)」では、1区画の大きさは50平方フィート(約4.6平方メートル)だ。
ユーザーは十分な土地を確保すると、それらを組み合わせて、一区画にまとめることができる。例えば、あるユーザーは、64区画を組み合わせて、ディセントラランド上に「The Secrets of Satoshi’s Tea Garden」を作り上げた。この土地はその広さとロケーションから、2019年に130万MANA(8万ドル相当)で売れた。デジタルの通りに完璧に囲まれ、アクセス抜群だったのだ。
バーチャル不動産企業メタバース・グループは2021年、ディセントラランドで、の61万8000MANAで土地を購入。これは当時、約320万ドル相当であった。実世界と同じように、デジタル不動産でもロケーションが何よりも物を言う。バーチャルでの人の行き来の多い、特定のエリアの玄関口やバーチャル競技場に近い土地は、価値が高まる傾向にある。
土地の賃借
市場での需要によっては、NFTを貸し出して不労所得を得ることもできる。メタバース内の地主は、ゲーム開発者に収入を得る方法を提供するDeFiプラットフォーム、PARSIQのIQプロトコルを通じて、土地の貸し出しが可能だ。
IQプロトコルを使えば、従来型の不動産の場合と同じように、バーチャル地主は借り手と交渉して、スマートコントラクトで実行されるあらかじめ決められた条件を通じて、賃借料を稼ぐことができる。
配当金
NFTが販売されたり、流通市場で再販された場合に、クリエーターの手元にわたるロイヤルティとは別に、投資家は受動的な配当金も稼ぐことができる。その一例が、2020年12月に22万2000ドルで落札された、ゲーム「F1デルタ・タイム(F1 Delta Time)」内にあるモナコのデジタルサーキットだ。
このサーキットを表すNFTの保有者は、レースの入場券から、参加者がREVVをステーキングする必要のある「エリート・イベント」の収益を含め、そこで行われるすべてのレースの収益から5%の配当金を受け取ることができる。
メタバースでのNFTとゲーム
P2Eゲームのアイテムと報酬
アクシー・インフィニティや、たまごっちにインスピレーションを受けたAavegotchiなど、P2E(プレー・ツー・アーン:プレーして稼ぐ型)モデルでは、交換、売却、借入可能なゲーム内暗号資産やNFTでユーザーに報酬を与える、まったく新しいバーチャル経済が生まれている。
さらに、バトル・レーサー(Battle Racer)などのゲームは、車のパーツを別々のNFTとしてリリースすることで、さらに有用性を高めている。ユーザーはそのようなパーツを購入し、自分で車両を組み立てたり、OpenSea(オープンシー)などのマーケットプレースで販売することができる。
まだまだ先の話になるが、このようなブロックチェーンネットワークでのNFTの使い方は、フォートナイトなどのよりメインストリームなゲームのスキンやコスメティック(キャラクターの見た目を変える要素)にも応用できるだろう。
プレーヤーが手持ちのアイテムの所有権や真正性をより良く反映できるようになるだけではなく、2025年までに744億ドルを超えると予想される、ゲーム内での支出を世界的に増加させることにもなるはずだ。
フォートナイトを手がけるソフトウェア開発会社エピック・ゲームズ(Epic Games)は、自社ストアにNFT対応のゲームを歓迎しているが、詐欺の懸念から、自社でNFTをリリースしたり、直接関与することはないとしている。
NFTとバーチャルライフ
アバターとソーシャルイベント
ツイッターが先日、NFTをプロフィール画像にできる機能の提供を開始したように、人々はNFTを、社会的な信用やステータス、似たような嗜好の人たちのコミュニティへの帰属意識のためにも収集する。
例えば、メタバース内でアバターが進化している一例は、NFTコレクション「Gutter Cat Gang」と、バーチャルリアリティスタジオ「House of Kibaa」とのパートナーシップに見られる。
House of KibaaはすべてのGutter向けにアニメ化された3Dアバターを作成し、保有者たちは、House of Kibaaのメタバースで利用可能な武器や衣服、車両、ペット、不動産など、無料のアップグレードが当たるくじ引きに独占的に参加できる。
プライベートイベントやパーティー
NFTチケットは、様々なメタバースで開催されるバーチャルイベントやパーティー、コンサートなどから収益を上げるのに活用できる。ラッパーで熱心なNFTファン、そして起業家でもあるスヌープ・ドッグは2021年9月、ザ・サンドボックスと連携してプライベートパーティーを主催。
ザ・サンドボックスで発表された通り、パーティーに参加するためのチケットとなる1000のNFTが作られ、そのうち650はザ・サンドボックスのマーケットプレースで販売された。このチケットを通じて人々は、スヌープ・ドッグのプライベートなライフスタイルを垣間見るチャンス、限定NFT、体験、自らのLANDでスヌープ・ドッグに独占コンサートを開いてもらうチャンスを手にしたのだ。
「スヌープ・ドッグ:ザ・サンドボックスと組んで、メタバースに進出する!」
スヌープ・ドッグ以外にも、NFTを中心としたイベントやリリースを行うために、ザ・サンドボックスと連携したブランドやインフルエンサーは数多く存在する。 例えば人気テレビ番組『ウォーキング・デッド』やゲーム会社のアタリ、ワーナーミュージックなどだ。
メタバースでのNFT投資:上級編
NFTへの支出合計は、2021年までに126億ドルを超えたと報じられている。買い手が不労所得を得たり、投資から最大限の利益を引き出す方法の例を、以下に紹介しよう。
利回りを生むNFT:ウェブ3市場のタイミングを測るのは、非常に熟練の投資家にとっても、ほとんど不可能である。そこで、より現実的なインセンティブを生み、NFTセクターのボラティリティの影響を軽減するために、ガバナンストークンを発行することで、受動的なリターンを生むプロジェクトが多く存在する。
例えば、この先10年間にわたって毎日10$BANANAトークンを生み出すように設定された、Genesis Cyber Kongz。他にも、SupDucks($VOLT)やMutant Cats($FISH)といったプロジェクトがある。ユースケースはまだはっきりしないが、Bored Ape Yacht Clubも2022年第1四半期に、独自トークンをローンチする見込みだ。
ステーキング:受動的リターンを生むNFTを収集する以外にも投資家は、ステーキング、つまり手持ちの資産をスマートコントラクトにロックアップして報酬を受けることで、NFTとDeFiプロトコルを組み合わせた恩恵を受けることもできる。
証券にまつわる厳格な規則があるため、これらの報酬は大抵の場合、プロジェクト独自のトークンであり、ガバナンスや投票権といった一般的な機能のために使われる。それでも、トークンがスシスワップやユニスワップなどの分散型取引所で扱われていれば、売却も可能だ。
ネスト化されたNFT:NFTはかつて、かなり固定されたものであった。多くの場合、誰かが作って、流通市場で買われたものは、変更することができなかったのだ。しかし、Charged Particlesなどのプラットフォームの登場によって、NFTを他のNFTに重ね、複数のERCベースのトークンの入ったバーチャルバスケットにすることができるようになった。
例えば、希少なNFTを別の希少なNFTへと、際限なくつなげるなど、このような新しいタイプのネスト化されたNFTは、コレクションに固有の価値を加え、投機的な投資を利益を生み出す資産へと転換することができる。
ネスト化されたNFTは、バーチャルアイテムをカスタマイズし、新しい機能を加えることで、メタバース内でユーザーに価値を提供するのに役立つ。Charged Particlesの共同創業者ベン・ラコフ(Ben Lakoff)氏は、ウェビナーでいくつかのユースケースを紹介している。その中には、含まれたNFTが利子を獲得することで力を増す武器や、預け入れられたトークンの数に応じて変化する絵画などが挙げられていた。
参考資料:https://www.coindeskjapan.com/139489/
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Source: 仮想通貨情報局