暗号資産(仮想通貨)市場は先週、極めて重要なサービスプロバイダーにまつわるマイナス報道に揺れ動かされることはなかった。ステーブルコインのテザー(USDT)を手がけるテザー社が、事業の性質について銀行に虚偽の申告をしたとして、米司法省の捜査対象になっていると報じられたのだ。
5月末以来の停滞
ニュースとも言えないものであり、市場の無反応は予想できるものだった。むしろ興味深いのは、5月末以来進行中の事態だ。テザーの成長が完全に横ばいとなっているのだ。
上のグラフは、テザーとUSDコイン(USDC)の供給量を示すものだ。5月末以来、テザーの供給量は643億ドルで止まっている。2カ月にもおよぶ停滞は、1月1日から5月31日で3倍に成長した通貨にとっては異例だ。
テザーは長きにわたり、実際にはドルによって裏づけられていないという疑いに悩まされてきた。テザー社が、裏づけもなく発行したテザーを使って、暗号資産価格を吊り上げているというのだ。トレーダーたちは明らかに、そんな疑惑は信じていないか、気にしていない。財政的背景は疑わしくても、テザーはおおむね、ドルへのペッグを維持してきた。
暗号資産を取引することは、リスクをある程度受け入れることを意味する。ラスベガスの有名カジノの会計窓口に行って、監査済みの賃借対照表を見せるように要求する人もいないだろう。
それでも、テザーの支払い能力という問題は、体系的な重要性を持つ。テザーやその他のステーブルコインは、暗号資産市場においてマネーマーケットファンド(MMF)として機能する。テザーは主に、バイナンスのようなオフショアプラットフォームで使われる。オフショア取引所とカジノの違いは、取引所では価格発見が起こる点だ。
割安になったテザーがビットコイン(BTC)やその他の流動性のある暗号資産の価格を暴落させるという、テザーが市場暴落のシナリオの一端を担う可能性は存在する。しかし2008年、リーマンブラザーズのMMF、Reserve Primary Fundに対する取り付けの結果もたらされたようなシステム全体への影響を持つことはないだろう。リーマンブラザーズの場合には、あらゆるMMFへの取り付けへと波及したのだ。
USDCとの違い
テザーは、USDCのような監査されたステーブルコインとは異なっており、それは、あるMMFが別のMMFとは違うという範囲を越えている。下のグラフが示す通り、テザーの成長が減速、停滞しても、USDCの成長は続いている。
テザーの供給量が643億ドルを維持していることが示す通り、それはテザーから、より規制されたステーブルコインの持つ相対的安全性への逃避によるものではない。
テザーの取引や、オフショア取引を回避しようする新規投資家の流入による可能性が高い。これには、プロの投資家や機関投資家、特にそれらのうち、投資家の資産に対する受託者責任を持つものも含まれる。
そのことは、テザーとUSDCの違いを浮き彫りにしている。これらは、味付けの違う同一のものではないのだ。1つは1対1で裏づけられていることが監査で示されており、もう1つはそうではない。
つまり、異なる分野で異なるユーザーが利用する異なるプロダクトなのだ。テザーを使うオフショアトレーダーの間で信頼の危機が起こったからといって、それが他のステーブルコインにまで波及すると考えるのは賢明ではない。その点では、テザーはリーマンブラザーズのMMFと同じような形で体系的な重要性を持つ訳ではないのかもしれない。
しかし、テザー暴落のリスクは、暗号資産に対するあらゆる投資の根底にある体系的リスクであることに変わりはない。
参考資料:https://www.coindeskjapan.com/117729/
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Source: 仮想通貨情報局