CZ氏とのQ&Aセッションに参加
仮想通貨(暗号資産)取引所世界最大手のバイナンスのChangpeng Zhao CEO(通称:CZ)が、仮想通貨メディアと対話する機会を設けた。同氏とのQ&AセッションにCoinPostも参加し、見解を伺うことができたので紹介する。
リップル社訴訟について
CZ氏は、米証券取引委員会(SEC)が証券法に違反するとして、リップル社を提訴した問題については次のように回答した。
一般のメディアで公開されていること以上のことは知らないが、「ソフトな合意」に達することを願っている。
仮想通貨業界はまだ新しく、規制が明確でない部分も多い。初めから明確なルールがあれば、業界の誰にとってもやりやすいのだが、残念なことに、裁判や訴訟を通して業界が定義されている流れがある。全ての業界が完全に規制に準拠し、安全に運営されることが望ましいが、新しい産業にとって、それは難しい。
この訴訟が全般的にうまく展開し、業界に大きなダメージを与えないことを願っている。
日本再上陸の可能性
日本でバイナンスの事業展開を望む声もあるが、CZ氏によると、その可能性は低いという。バイナンスチームは2017年、その可能性を調査した上、最終的に断念した経緯がある。
2017年4月、世界に先駆けて日本政府がビットコインの法的地位を認め、金融庁が取引所に登録制を導入したことから、CZ氏は日本に拠点を置くことも真剣に検討したようだ。
しかし、登録申請のルールを調査するにつれ、取引所が扱うことができるコイン数の制限が、当時すでに80の仮想通貨を上場していたバイナンスにとって、最大のネックだと判明したとCZ氏はコメント。当局とも交渉を重ねたが、最終的には金融庁からの正式通告を受け、日本市場への進出を断念するに至ったという。
現在でも、「日本の状況はそれほど変わっていない」とCZ氏は言う。「金融庁が承認した30種の通貨」しか取り扱うことができないなど、制約の厳しい構造下では、独自の上場基準で積極的に多数の通貨を取り扱うバイナンスのビジネスモデルが上手く機能しないとしている。
また、例え日本円から仮想通貨へのオンランプが可能になったとしても、日本側の制限により、日本のユーザーをBinance.comに移行することはできず、ビジネスの相乗効果も期待できない点を懸念した。
CZ氏は、日本企業の買収を通して市場に参入する選択肢も検討したと言う。しかし日本での営業許可を取得したとしても、「バイナンスの強みを生かせない市場環境下では、日本の競合他社に対する優位性が得られない」との結論に至ったようだ。
日本の取引所は銀行と良好な関係を築き、中には上場企業が所有するものもある。また、日本にはすでに21の取引所があり、市場を熟知し、強力なマーケティングを行い、多くのメディアへの露出度が高いと分析している。CZ氏は、これらは「バイナンスの得意分野ではない」と胸の内を明かした。
米コインベースのIPOとバイナンスIPOの可能性
米最大手仮想通貨取引所コインベースが検討するIPO(株式市場への上場)の件について尋ねられると、CZ氏はバイナンスとの違いを指摘した上、「バイナンスはIPOは視野に入れていない」とし、次のように説明した。
伝統的な企業にとって、IPOは「良い方法」だが、仮想通貨業界にはより多くの選択肢がある。3年前にICO(イニシャル・コイン・オファリング)による資金調達を行ったバイナンスは、現在でも問題のない十分な資金を得ることができたと言う。またユーティリティトークンも活用している。
コインベースは2011年に設立された、業界でも歴史のある成功した企業であるのに対し、バイナンスの設立は3年半前。スタートアップとして、最初期を乗り越え、現在は「成長途上」にあると考えている。
一方、コインベースのIPOは、おそらくバイナンスを含む多くの仮想通貨ビジネスの評価を高めることにつながると考えており、「コインベースCEOのBrian Armstrong氏に賞賛を贈り、心からその成功を願っている」とした。仮想通貨ビジネスのための「別のドア」を開くことになるIPOの実施は、業界の正当性を立証することになるだろう。
中国のデジタル通貨と中国進出について
CZ氏は、中国進出の可能性について尋ねられると、まず、その可能性はないと理解していると答えた。しかし、中国政府が推進するデジタル通貨(デジタル人民元=DCEP)についてはポジティブに見ているようだ。以下はCZ氏の弁。
「DCEPは極めて迅速に推進されており、進捗は良好なようだ。このような断固たる実行力が中国の強みであり、業界にとっても素晴らしく良いことだ。」「デジタル通貨に関する良質な教育の一環として、また中国の人々全てにブロックチェーン技術の信頼性を提供することができる。技術的な観点からも、力強く採用が進んでいくのではないか。
しかし、DCEPがどのような形で成功するかはまだわからない。中国のやり方を考慮すると、ブロックチェーン技術を活用した中央銀行発行のデジタル通貨を持つことが目標だと推測している。だとすれば間違いなく可能であり、評判も良いだろう。
一方で、中国も含めた、中央銀行発行のデジタル通貨(CBDC)は、ビットコインに比べ制限的なものになると思う。世界中の誰にでも送れて、誰からもブロックされず、本人確認やマネロン対策も必要ないといった自由度はない。
CBDCはネイティブの純粋な仮想通貨とは異なるもので、いわば法定通貨と仮想通貨の中間的な役割を果たすのではないか。”中間的な存在”があるのは良いことでもあり、将来的にCBDCを統合していく方法が見つかれば、統合してサポートしていきたいと思う。バイナンスの立場から言えば、CBDCも含め、できるだけ多くの仮想通貨へのアクセスをユーザーに提供したいと考えている。
ただ、CBDCの採用のスピードについては、まだまだ様子を見る必要があるだろう。
”後継者”にも言及
CZ氏は、それほど遠くない将来、CEOの座を退く可能性も視野に入れているようだ。
取引所としてのバイナンス 「Binance.com」は、強力なリーダーとチームに支えられ、ビジネスとして比較的成熟してしているため、同氏自身が個人的に時間を費やす必要性が低くなってきていると言う。大まかな構成を決めた後は、実際のプロジェクトの詳細や選定には関わっておらず、短期的に緊急性の高いものはCZ氏に依存することのないような体制を作り上げているとのことだ。
同氏は、戦略的に重要だと考えられるものに、より多くの時間を割きたいと述べている。
バイナンスは組織として、非常に自立的で、比較的フラットであり分散化されているとのことだ。また、企業として何か問題が起きてもすぐ対処できるよう「バックアップ」の存在を非常に重視しており、CZ氏を含む経営の主要メンバー全員には、その役割を引き継げる「バックアップ」する人材まで存在すると言う。
今すぐにバイナンスから引退すると言うわけではないと強調しながらも、今後2〜5年間にバイナンスを前進させられる強力な後継者と見つけたいと述べた。
そんなCZ氏が個人的に注力しているのは、バイナンスのネイティブトークンBNBを使用するエコシステムに優秀な人材を投入することであり、バイナンス・スマートチェーン(BSC)を推進するための全体的なプログラムの設計だと言う。
BNBコミュニティを成長させるため、より多くの開発者やプロジェクトをBSCに誘致するプロモーションに、多くの時間を費やしているとのことだ。目標としては、現在100〜200のプロジェクトがあるBSCを、今後1〜2年で2万以上の活発なプロジェクトが進行するようなエコシステムに育てていきたいと望んでいると述べた。
現在は規模が小さくとも、今後10年から20年の間に、間違いなくDeFiが未来になると考えているとCZ氏は強調した。
参考資料:https://coinpost.jp/?p=208960
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Source: 仮想通貨情報局