仮想通貨ウォレットの規制強化
米財務省のFinCEN(金融犯罪捜査網)が暗号資産(仮想通貨)ウォレットの金融機関との取引について取締りを強化する規制案を正式に発表した。
この規則が施行された場合には、自己ホスト型ウォレットについてマネーロンダリング防止規則が強化される。
3000ドル(約31万円)を超える引き出しに対してKYC(顧客身元確認)の強化が求められており、暗号資産サービスプロバイダー(VASP)は、その引き出しを行う顧客と、送金先の身元情報(名前や住所など)を確認しなければならない。また1万ドル(約103万円)を超える取引の場合には、FinCENへ報告する義務が発生する。
つまり、取引所と外部ウォレットの間で、仮想通貨の匿名取引ができないようになることを意味している。
FinCENは、大きな取引を小さな取引に分割して報告義務を回避することを防ぐような方策も提案した。
この規制案は、国際的規制機関のFATF(金融活動作業部会)が策定したトラベル・ルールに沿うものである。このルールは、1万ドルを超える取引の送信者と受信者の身元情報を取引所間で共有することを求めるものだ。
仮想通貨コミュニティや議員から反対の声
FinCENは、提案の背景について次のように説明した。
この提案の目的は、米国の国家安全保障を、外国政府が後援するランサムウェアやサイバーセキュリティ攻撃、制裁回避、テロ資金調達など、さまざまな脅威から保護するための適切なコントロール体制を築くことだ。
しかし、この規則案は取引所の業務を増やし、仮想通貨取引から現金のような匿名性を失わせ、個人を監視するものともなる。米国議員や仮想通貨コミュニティからは反対の声が挙がっている。
共和党の議員、Warren Davidson氏、Tom Emmer氏など四名は、財務長官に公開書簡を提出し、この動きを見直すように求めた。また、米大手仮想通貨サービス企業「サークル」のCEO、Jeremy Allaire氏も財務省幹部宛に書簡を提出し、次のように指摘した。
この提案は、問題となっている実際のリスクに十分に対応しておらず、産業界やアメリカの競争力を著しく傷つけ、(ブロックチェーン分野で先進的な)中国企業に経済的・産業的な優位性をもたらし続けることになる。
パブリック・ブロックチェーンが多くの産業を変革する可能性を抑制し、米国の競争力を低下させるとした格好だ。Allaire氏は、「ソフトウェアやプロトコルレベルのソリューション」で問題に対処することが可能で、いつでも説明のため対話に応じると締めくくった。
また、今回の規制案にはパブリックコメントも受け付けているが、非常に期間が短いことも問題視されている。パブリックコメントの締切は2021年1月4日に設定されており、これに対してJake Chervinsky弁護士は次のようにツイートした。
「行政手続法(APA)は、新しい規則を採用する前に、連邦政府機関が一般市民からの意見を受け入れて検討することを義務付けて」おり、パブリックコメント期間が非常に短いことで、FinCENはAPAに違反している可能性があると指摘した格好だ。
一方でFinCENは提案文書の中で、ルール施行が遅れると、不正な資金と結び付く既存の仮想通貨ウォレットから、非合法な仮想通貨取引所などに資産が移されてしまう可能性もあると主張している。
参考資料:https://coinpost.jp/?p=207767
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Source: 仮想通貨情報局