中国に拠点を置く複数のDeFi(分散型金融)プロジェクトが数時間で数百万ドルの資金を集め、ネルボス(Nervos)共同創業者のGuoning Lü氏は、DeFi(分散型金融)ブームが中国に到達したことを実感した。
あるプロジェクトは預かり資産(TVL)が8月のスタートから2週間で、290万ドル(約3億1000万円)から1440万ドル(約15億2000万円)に増え、その3日後には3倍になった。
DODO(中国の開発チームが作った流動性プロバイダー)は現在、預かり資産が1億ドル(約105億円)を超え、当記事執筆時点ではデータサイトのDeFiパルス(DeFi Pulse)では16位となっている。
DeFiは、暗号資産(仮想通貨)で今、最も熱いトレンドだ。DeFiブームが中国まで到達したことは驚きではない。中国では、取引やトークンセールスに対する政府の規制にもかかわらず、暗号資産(仮想通貨)コミュニティは活発に動いている。
中国のスタートアップは、欧米のプロジェクトを高度にローカライズし、素早く適応させ、中国の暗号資産コミュニティーに特化したマーケティングを行うことで、DeFiブームに重要な役割を果たしていると事情に詳しい業界関係者は語る。
7月から10月中旬にかけて、中国のSNS「ウィーチャット(WeChat)」でのDeFiの検索回数は急増。分析ツールの「ウィーチャット・インデックス(WeChat Index)」によると、この期間にDeFiの検索回数は2倍に増えた。
NESR、DForce、YFII……。中国で人気のDeFiプロジェクトは、数週間で数百万ドルを集め、DeFiパルスの預かり資産ランキングの上位を飾った。
単なる模倣ではない
中国では欧米の製品やサービスを模倣したと言われるものが散見される。DeFiプロジェクトのコンパウンド(Compound)は、中国のDForceがコードを「盗み」、中国の流動性マイニングサイトのYFIIはヤーン・ファイナンス(Yearn.Finance:YFI)を模倣したと主張する。
「確かに多くの中国のプロジェクトはヤーン・ファイナンスや分散型取引所のユニスワップ(UniSwap)など、欧米のDeFiのパイオニアのコードをコピーしている。しかし、中国企業は元となるサービスをローカライズすることでイノベーションを行っており、それによってDeFiは中国国内でさらに人気を集めている」(ネルボスのLü氏)
DeFiフレンドリーな暗号資産ウォレットや、個人投資家向けの中央集権型取引所の資金提供プログラム、ターゲットを絞ったマーケティング戦略などは、中国のスタートアップがDeFiを中国に浸透させるためにローカライズしたプロダクトやサービスの一例だ。
中国のDeFiスタートアップは、ウォレットを通じて暗号資産投資家への拡大を図っている。
「技術的特徴や仕組みが複雑なため、DeFiアプリケーションを直接利用する方法を理解している人は多くない。しかし、多くの中国の暗号資産ウォレットは、ユーザーがDeFiプロジェクトに参加できるようにプロセスを簡略化・最適化している」(ネルボスのLü氏)
中国市場に向けたローカライズ
例えば、杭州市に拠点を置くimTokenは、中国も最も人気のあるモバイルウォレットだ。Tokenlonと呼ばれる分散型取引所(DEX)機能を内蔵し、ユーザーはイーサリアム、EOS、トロン(TRON)上のさまざまなDapp(分散型アプリケーション)のトークンをウォレット内で取引できる。
このウォレットは元々、ブロックチェーンプロトコルのカイバー(Kyber)と統合されているが、ウォレット内のDEX機能は別のDeFiプロジェクト、0xのコードを使って構築されている。2016年に立ち上げられたimTokenは、2年前にIDGキャピタル(IDG Capital)が主導したシリーズAの資金調達ラウンドで1000万ドル(約10億5000万円)を調達した。
アメリカのDeFiプロジェクトにも同様のサービスを提供するところがあるかもしれないが、こうしたウォレットは中国の投資家がDeFiに参加する主要な手法として台頭してきているとLü氏は語った。
個人投資家にとってDeFi参入のもう1つのハードルは取引コストだ。ほとんどのDeFiアプリケーションはイーサリアムブロックで運営されており、その取引手数料は個人投資家にとって法外に高くなっている。
中央集権型取引所は中国のDeFi分野で大きな役割を果たしており、解決策を持っていると分散型暗号資産レンディングスタートアップ、DeFinerのジェイソン・ウー(Jason Wu)CEOは語った。
「中央集権型取引所は、個人投資家から得たお金をDeFiに投資するためにプールし、数百万の個人投資家がDeFiプロジェクトの高額な取引手数料を支払えるようにしている」とウー氏は述べた。
その代わりに中央集権型取引所は、そうしたDeFiプロジェクトのガバナンストークンを上場することで取引高を増やし、より多くの手数料を手にする。
十分な資金
「暗号資産では資金は常にリターンを探し求めており、DeFiは素晴らしい機会を提供している。今年、流動性マイニングの人気が高まった時、資金はDeFi分野に流入し、集中した」とネルボスのLü氏は述べた。
またLü氏によると、中国のDeFiプロジェクトを支える資金は、新しい資金ではなく、中国の暗号資産業界に依然から存在している2つの既存勢力のものかもしれないという。
一つはインフラとエコシステムに投資してきた実業家たち、もう一つは、より投機的で、短期的利益を優先する機関投資家たちだ。
また中国の暗号資産業界の豊富な資金の一部は、暗号資産マイニング業界によるものだ。ビットメイン(Bitmain)やマイクロBT(MicroBT)といった大手マイニング機器メーカーが存在している。
既存の取引所の役割
フォビ(Huobi)、クーコイン(KuCoin)、バイナンス(Binance)といった中国生まれの中央集権型取引所も、中国における数々の暗号資産ブームを支える原動力となっている。
だが、新興のDEX(分散型取引所)を支援することは、バイナンスなどの中央集権型取引所にとっては問題となり得る。CoinDeskとの最近のインタビューの中で、バイナンスのチャンポン・ジャオ(Changpeng Zhao)CEOは、中央集権型取引所が暗号資産取引市場でDEXとシェアを争う可能性があると話した。
中国生まれの3つの大手取引所、バイナンス、フォビ、クーコインは、DeFi分野進出の取り組みを進めている。バイナンスは先日、開発者がDeFiアプリケーションを構築できる独自のブロックチェーンをスタートさせた。フォビは有望なDeFiプロジェクトをサポートするためにDeFiラボ(DeFi Labs)を開始。また3つの取引所はすべて、DeFiプロジェクトのガバナンストークンなどを上場している。
中国のDeFiに最初にやって来た波はカジノのようなギャンブルだったと、フォビのDeFiラボで最高投資責任者を務めるシャルリン・ウー(Sharlyn Wu)氏は述べ、そうした市場ではあまりにも多くの投機が行われていたと指摘した。しかし、これは変わる可能性がある。そして、中国は必ずしも欧米を追従する立場ではないかもしれない。
「アメリカ発のDeFiの最初の波にアジアは当初、出遅れたが、中国の開発者たちはCeFi(中央集権型金融)を主導したように、DeFiを主導していくと考えている」とシャルリン・ウー氏は語った。
参考資料:https://www.coindeskjapan.com/84800/
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Source: 仮想通貨情報局