ショートポジションやレバレッジ取引の活用法
日本の仮想通貨市場では、「現物取引」よりも取引量の約9割を占めるとされる「レバレッジ(証拠金)取引」が主流となっています。過去に国内では、FX(外国為替証拠金取引)が流行し、損失を被る投資家が急増したために規制強化の動きが続いたこともありました。
レバレッジ取引は、少ない資金で倍率をかけることで資金効率に秀でている一方、使い方を間違えると、あっという間に資産を全て溶かすことができるほどのリスクを内包しています。
ここでは、レバレッジ取引をどのように使うべきかを解説し、読んで頂いた皆様に「博打としてのレバレッジ取引」ではなく、「資産運用のためのレバレッジ取引」を行ってもらえるよう解説していきたいと思います。
レバレッジ取引とは
まずレバレッジ取引について解説します。レバレッジ取引とは、実際に入金している金額を「証拠金」として利用し、取引を数倍に膨らませて取引を行うことです。
レバレッジ取引は「信用取引」を含まれており現物を決済する取引も含まれています。一方でFX取引は「差金決済取引」で現物の受け渡しがないため、その違いを理解しておきましょう。
数倍の取引を行う場合でも、実際の損益は証拠金がある分しか損失は出せません。
レバレッジを4倍で取引を行った場合の損失を簡単に計算してみましょう。 1BTCが=100万円の時に証拠金を100万円入金して取引を行ったとします。
現物取引であれば1BTCまでしか購入できませんが、レバレッジ取引であれば400万円まで取引可能です。
その後1BTCが75万円になったとします。
現物取引の場合は100万円-75万円=▲25万円が損失となりますが、4倍で取引したレバレッジ取引の場合は ▲25万円×4倍=100万円という結果になります。
つまり「全損」ということです。 (※計算例のためレバレッジ取引にかかるfunding rate等コストは計算対象外としています。また実際には証拠金維持率が定められているため実際には上記の変動前にストップロスが発動します。)
リスクが現物の4倍となっているということを最初は覚えておけばいいでしょう。
レバレッジ取引ではショートポジションを利用可能
次に現物取引ではできませんが、レバレッジ取引の場合に可能な取引をご紹介します。それは「仮装通貨を持っていなくてもショートポジションを構築できる」ということです。
ショートポジションとは相場の下落方向に賭けたい時に、先に仮想通貨を借りて(借りたようにして)市場で売却し、その後買い戻して、下落幅を利益として得る手法です。
FX取引の場合実際は原資産を借りておらず、イメージとして「借りたようにポジションを反映させて、買い戻しをした時に、発生した日本円(法定通貨)の変化分のみを決済する」ということになります。
資産運用のためのレバレッジ取引を利用するには
レバレッジ取引を行っている人は、実際に自分自身がどのくらいのリスクを取っているのか理解していない投資家やトレーダーが多いと感じます。そしてレバレッジ取引=「危ない」とか「博打」というイメージがついていくことになりかねませんが、実際は考えて利用すると大きな武器となります。
では、どのようにレバレッジ取引を利用していけばいいのでしょうか? シナリオ別に分けて解説したいと思います。
仮想通貨長期ホルダーのヘッジ手段
最初は「現物の仮想通貨を長期間保有している投資家のヘッジ手段」で利用可能です。レバレッジ取引は利益を大きく取るためだけのツールではありません。リスクをコントロールする為のツールとしてとても大事なツールとなっています。
例として10BTC保有している投資家が、ビットコイン半減期後下落するのではないかと考えているとします。その場合2.5BTC分の日本円を入金し、レバレッジ4倍で半減期の日からショートポジションを構築します。
予想通りBTCが5%程度下落した場合、現物で保有している10BTCは5%損失が発生しますが、ショートポジションを取った10BTC分ののショート(2.5BTC×4倍のレバレッジ)でも、現物で発生した損失分が利益となっているため、両者合わせると損失はほぼ0に近い数字が出るでしょう。
これがヘッジのためのレバレッジ取引の手法で、マイニング業者や機関投資家はこのような大きいイベント前や後に発生し得るリスクを極力排除しながらポジションを持っているということです。
目標リターンから逆算した使い方
次に目標リターンから考えたレバレッジ取引の手法についてご紹介します。
例としてビットコインでの取引を参考にしていきます。投資家が目標リターンを「20%」と設定したとします。しかし目標リターンの達成目処が「1ヶ月」なのか「1年間」なのかで取引の仕方は大きく異なります。
「1年間の目標リターン20%の場合」
期間1年での目標リターンをビットコインの取引で20%であった場合、現物取引を行うのが合理的と判断できます。 その理由は「1年間という期間で見ると現物価格の値幅が20%以上動く可能性が高いから」ということです。
現物価格が目標リターン分動くものに対して、あえてレバレッジ取引を利用する必要はなく、レバレッジ取引で発生するfunding rateと呼ばれるキャリーコスト分マイナスという考えもあります。
キャリーコストとはスワップコストと同じでポジションを保有することに対してかかるコストのことです。 1年間レバレッジでポジションを保有すると数%はかかるコストになってしまうため、必要でなければ利用する必要はないと考えてください。
「1ヶ月の目標リターンが20%の場合」
期間1ヶ月の目標リターンが20%と大きい場合はレバレッジを使う必要性が出てくるでしょう。当然その時に発生すると考えられる値動きの幅にもよりますが、1ヶ月でボラティリティが10%と考えた場合はレバレッジを2倍にして調整するといった工夫が必要になります。
これは考え方のベースとして「1ヶ月でビットコインが20%の値動きが出ない場合は」ということを前提に考えており、ボラティリティの高い市場環境かどうかを見極める必要があります。
もしも1ヶ月で40%以上の値動きが発生しており、まだそのような変動幅が継続すると考えるなら、レバレッジを利用する必要も無くなります。一方で市場参加者が減少しボラティティが3%等大きく低下することになってしまうと、レバレッジを最大限利用する環境になるという考え方がベターです。
レバレッジ取引で絶対行なってはいけないこと
レバレッジ取引で行なってはいけないことは「値動きが大きい時にレバレッジを最大限に利用してトレードすること」です。
よくSNSとかでは海外の仮想通貨取引所でレバレッジが100倍まで利用できるからトレードがしやすいということを意見として書いている方もみられますが、この一番伝えたいことは「レバレッジを最大に利用しているということ」ではなく、「レバレッジ100倍によりストップロスのラインが大幅に低下することで値幅が出た時でも余裕ができる」ということが一番伝えたいことでしょう。
勘違いして考えやすいのは、値動きが大きく出た際にレバレッジを最大限に利用してトレードすればすぐに儲かるのではという安易な発想です。 当然ビギナーズラックで大きく勝つこともあるでしょう。しかしいつか訪れる「1敗」で資産の全てを溶かす結果が待っていると言っても過言ではありません。
決してレバレッジ取引を行う際はボラティリティと市場環境を鑑みて適切なレバレッジで取引を行うようにしてください。
レバレッジ取引を行う時に守るべきこと
最後に資産運用を適切に行うためのレバレッジ取引の利用方法をまとめていきたいと思います。
まずレバレッジ取引を長期投資で利用することはするべきでは無いと思います。理由としては上述したように「スワップコスト(ポジション保有コスト)」が数時間置きや一日置きにかかるような設定となっている取引所が多く、これを1年間で累積すると大きなコストとなってしまいます。
そのため、レバレッジ取引を行う際は、
- 目標リターンとリターン達成期間を設定
- 対象投資通貨のボラティリティをチェック
- レバレッジ取引が必要か判断
- レバレッジの倍率を設定しトレード
という順番で必ず利用するようにしましょう。闇雲にレバレッジ取引で大きく勝負するのは博打と一緒です。
トレードで一番大切なのは「トレードしている快感を得ること」ではなく「利益を得ること」です。娯楽のトレードと資産運用のトレードはやっていることは同じだとしても全く意味は異なります。
レバレッジ取引は現物取引で達成出来ないリターンがある場合のみ利用することをオススメします。個人投資家はどうしても近視眼的な見方になりますが、年間現物で50%以上の値動きが発生するアセットクラスはなかなかありません。それにレバレッジをかけて取引するのは相応のリスクが存在するため、できる限り利用しないようにするのが賢明です。
「レバレッジ取引のご利用は計画的に」しておきましょう。
参考資料:https://coinpost.jp/?p=148755
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Source: 仮想通貨情報局