中国は、世界経済のデジタルトランスフォーメーション(DX)をリードするための壮大な戦略の一環として、国家ブロックチェーンプラットフォームをローンチしようとしている。
国家ブロックチェーン
中国の国家情報センター(State Information Center)が主導するブロックチェーン・サービス・ネットワーク(BSN:Blockchain Service Network)は、国内の商業利用向けローンチが4月15日、そして世界的なローンチが4月25日と伝えられている。
想定通りに稼働していれば、企業やソフトウエア開発者は、BSNに接続し、ブロックチェーンベースのアプリケーションを開発することが可能になる。レゴを組み立てるのと同じくらい簡単に。
しかし究極の目標は、プログラマーの技術的サポートをはるかに超えるものだろう。
「BSNが世界中の国々で根を下ろすに従って、中国が革新し、そのゲートウェイアクセスが中国によって管理されている唯一のグローバルインフラネットワークとなる」と中国の政府機関、複数の国営組織、ブロックチェーン企業が主導するBSNアライアンス(BSN Alliance)の最新のホワイトペーパーは宣言している。
地政学的、マクロ経済的影響力
このように、同プロジェクトは地政学的、マクロ経済的な影響力を持っている。
「今回の動きは、中国が他国にインフラを提供し、先行者利益を獲得する『一帯一路構想』に非常に類似している」とカリフォルニア ・ウェスタン・スクール・オブ・ロー(California Western School of Law)で法学教授および国際法研究ディレクターを務めるジェームズ・クーパー(James Cooper)氏は述べた。
プロジェクトはまた、ロボット工学やAI(人工知能)などの分野でのイノベーションを促進するための構想「中国製造2025」も思い起こさせるとクーパー氏は語った。背景にあるのは、他国のイノベーションをリバースエンジニアリングする模倣者という中国のイメージを打破したいという願いだ。
10月、内部テストについての発表の中で、中国政府はさまざまなユースケースを想定していた。
例えば、インターネットに接続されたセンサーを利用して、公共リソースを管理するためのデータと知見を集めるスマートシティのアプリケーションなどだ。特にエネルギーの節約にアライアンスは言及した。また身元情報の登録やデータ保管も、BSNの潜在的なユースケースとしてあげられた。
「中国は、世界のテクノロジーリーダーになるという野心を持っている。少なくともブロックチェーン分野では、それを成功させる十分な技術力を持っているのではないかと考えている」
ブロックチェーンに特化したベンチャーキャピタル、プルーフ・オブ・キャピタル(Proof of Capital)のマネージング・パートナー、エディス・イェン(Edith Yeung)氏はそう語った。
アメリカ、日本にもノードを配備
いつかの兆候が、中国はこの瞬間のために開発を進めてきたことを示している。
「中国は、世界で最も多くのブロックチェーン関連特許を申請している。銀行、情報通信、インターネット大手など、最も重要なインフラ企業が参加している」とイェン氏は指摘した。
国内での効率性とスケーラビリティを証明したあと、同ネットワークの使命の1つは、海外進出だ。香港やシンガポールなど56都市で、同アライアンスはまずテストを行っている。
「アメリカ、日本、オーストラリア、ブラジル、南アフリカ、シンガポール、フランスなどにすでに国際ノードを配備した」と暗号資産取引所を運営するフォビ・グループ(Huobi Group)のレオン・リー(Leon Li)CEOは広報担当者を通じて語った。
シンガポールに拠点を置く同社のブロックチェーン開発子会社は、BSNの設立メンバーになっている。
BSNのビジネス優先姿勢を指摘して、他の国々には参加するインセンティブがあるだろうとイェン氏は述べた。
「ホワイトペーパーに、企業に対するセールスポイントが記されている。低コスト、高速な実装を実現し、管理も簡単だ」
BSNとは?
6カ月の内部テストを経て展開されているBSNは、中国の国家発展改革委員会傘下の政府機関である国家情報センター、および、中国電信(China Telecom)、中国聯合網絡通信(China Unicom)をはじめとする国営情報通信企業、そして決済企業の中国銀聯(China Union Pay)などが主導している。
だが、BSN自体はブロックチェーン・プロトコルではない。
むしろ、開発者が複数のエンタープライズ・ブロックチェーン、あるいはパブリックチェーンの中から望むチェーンを選択して接続し、プログラミングできるよう、最も難しい部分をこなす中央集権型プラットフォームだ。
ホワイトペーパーによると、目標は運営コストの削減、柔軟性の向上、規制当局による優れた監視の提供にある。
「分断化された市場を統合するために設計されたBSNは、クラウド、ポータル、そしてフレームワークを超えたパブリックネットワーク。開発者は簡単かつ安価に許可型(中略)、および非許可型ブロックチェーン・アプリケーションやノードの開発、実装、運用、維持を行うことができるようになる」とフォビ・グループのリーCEOは述べた。
2019年10月15日にスタートし、4月15日に終了したベータテスト期間に、2000以上の参加者が登録した。3分の1は企業、残りは個人の開発者とリー氏は述べた。
BSNのメリット
リー氏によると、BSNのネットワークとしてのメリットの1つは、低コストであり、将来も競合の一部に比べて、より幅広いユーザーがアクセスできる。
「(分散型台帳技術)アプリケーションをアリ・クラウド(Ali Cloud)やファーウェイ・クラウド(Huawei Cloud)といった大手クラウドサービスで展開すると、年間に数万ドルのコストがかかることもある」とリー氏は述べた。
「開発者のコストを抑えるために、BSNの最低コストは年間わずか300ドルに設定されている」
低コストは、多くの中小企業や学生を含む個人が発明やイノベーションのためにBSNを使うことを促進し、ブロックチェーン技術の急速な開発と広範な利用を加速させるとリー氏は述べた。
BSNの2つの主要部分
ホワイトペーパーによると、BSNは2つの主要部分に分かれている。1つ目は、いわゆるパブリック・シティ・ノードの展開。これは本質的には、トランザクションを処理するための都市ごとの専用データセンター、あるいはクラウド演算リソースだ。
ホワイトペーパーによると、BSNはメンバーである情報通信企業を通じて、100のシティ・ノードを展開し、2020年末までに最大200以上を展開する計画だ。
2つ目は、暗号化やソフトウエア開発キット(SDK)といった領域で統一基準に合致するよう、複数のエンタープライズ・ブロックチェーン・プロトコルを設定し、修正すること。それにより、システムは互いに連動して機能できるようになる。
現状、BSNは、ウォルマート(Walmart)がサプライチェーンでの食品追跡に使っているオープンソース・ソフトウエア「ハイパーレジャー・ファブリック(Hyperledger Fabric)」を含む、複数の許可型ブロックチェーン・プロトコルを設定し、追加した。
またインターネット大手バイドゥ(Baidu)のXuper Chain、そして深セン市の政府機関、テンセントやウィーバンク(WeBank)、ファーウェイ(Huawei)などの地元テック企業のコンソーシアムが開発したFISCOなど、中国国内で開発されたプロトコルも同様に設定、追加した。
最近では、ネルボス(Nervos)・パブリックチェーンの開発を支援したクリプテープ(Cryptape)の開発者が開発したエンタープライズ・ブロックチェーンプロジェクト「CITA」もBSNに追加された。
アライアンスの承認を受け、標準化されたSDKを受け取ると、開発者はプロトコルを選択し、ブロックチェーン・アプリケーションを展開する必要のある場所で演算リソースを借りることができるようになる。
許可型プロトコルは相互運用性をサポートするように改良されているため、開発者はより大きな柔軟性を手にすることができるとホワイトペーパーは記した。
トップダウン・アプローチは、中国が規制当局の官僚主義を回避しつつ、大規模ネットワークを迅速に開発することを可能にしているとクーパー氏は指摘した。
「中国は国家戦略を持っている」
参考資料:https://www.coindeskjapan.com/53345/
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Source: 仮想通貨情報局