仮想通貨取引所KuCoinの主要なウェブドメインであるKuCoin.comは、3月末からシンガポール高等裁判所の命令によりロックされている。
裁判所は3月24日、KuCoinがそのウェブサイトを含む資産を国から移動させることを禁じる仮差止命令を出した。コインテレグラフに提供されたドメイン管理を手掛けるGoDaddyからの3月30日付のメールは、GoDaddyが裁判所命令に準拠していることを示している。
取引所がロックされた主要なウェブアドレスにどのように対処するかは、Kucoinに関する多くの未回答の質問の1つだ。KuCoinは企業組織の再編や法的問題にも直面している。
KuCoinへの幻の投資
2017年9月に設立されたKuCoinは、1年以内に100ヵ国で500万人のユーザーを誇るまでになった。約1年後の18年11月14日、KuCoinはベンチャーキャピタリスト（IDGキャピタル、マトリックスパートナー、ネオグローバルキャピタル）からラウンドAで2000万ドルの資金調達をしたと発表していた。しかし、これらの投資の少なくとも1つは実現しなかった。
発表の時点で、KuCoinのマイケル・ガン（Michael Gan）CEOは次のように述べていた。
「IDGキャピタル、マトリックスパートナー、ネオグローバルキャピタルの力を合わせることで、KuCoinが大幅に成長し、何百万人もの潜在的なユーザーの仮想通貨の理解と採用を拡大させ、これらのユーザーが仮想通貨の世界で利用できる、ほかには存在しない最高のプロダクトをより効率的に見つけることができるようになるだろう」
IDGキャピタルは、その投資ポートフォリオにおいて、コインベースやリップルといった著名な仮想通貨企業が並んでいる。この記事の発表時点では、KuCoinはIDGキャピタルとネオグローバルキャピタルの両方のウェブサイトにポートフォリオ企業として表示されているが、マトリックスパートナーのウェブサイトには表示されていない。
しかし、ネオグローバルキャピタルのウェブサイトに表示された内容にもかかわらず、この問題についての情報を持つある個人は、コインテレグラフへのメールの中で、ネオグローバルキャピタルが実際にはKuCoinに投資したことはないと語った。むしろ、ネオグローバルキャピタルは、駆け出しの取引所に足して後方支援だけを与えたという。
IDGキャピタルとマトリックスキャピタルは、コインテレグラフからのコメントの求めに応じなかった。
組織再編に関する多くの疑問Many questions about corporate restructuring
2020年3月17日、KuCoinはセイシェルの首都ビクトリアからプレスリリースを発表し、抜本的な組織再編について説明している。それは「3つのビジネスグループ、つまりKuCoin Global、KuCloud、KuChain＆KCS Business Groupで構成される」KuGroupを設立するというものだ。
よくある企業の発表のように見えるが、実際にはKuCoinでの広範囲にわたる変更の集大成を記している。この組織再編は、シンガポールと米国の両方で法的問題に直面し、取引所の所有権と規制管轄権を巡る問題から出てきたものだ。
KuCoinの3月17日の発表は、米国に拠点を置く法律事務所Schallが集団訴訟を巡り、「口座保有者に対する虚偽の誤解を招く声明」を発行したとして、KuCoinとその別の取引所に対する調査を発表するわずか6日前に行われた。KuCoinはまた、未登録証券の売却を巡り、米ニューヨーク州南部地区裁判所で別の集団訴訟の対象ともなっている。
一方、KuCoinがそのドメインを別のプロバイダーに移動することを防ぐ裁判所命令には、仮想通貨取引所を訴えているサイバーセキュリティプロバイダーが含まれている。その話の詳細は今後数日で明らかになると見込まれる。
GoDaddyからKuCoinへのメールで、シンガポールの裁判所命令によりドメインがロックされていることが示されている
2019年10月14日、シンガポールでKuCoinに対する訴訟の調停が開始された直後の日、シンガポールを拠点とする企業体であるPhoenixFin Pte Limited（KuCoinの背後にある法人であり、KuCoin.comのドメインの所有者）の取締役らが辞任した。この辞任に関しては公式発表はなかったが、シンガポールの会計企業規制庁に提出された記録によると、共同創設者のマイケル・ガン（Michael Gan）氏とタン・クー（Tang Ke）氏、および金融支援を行っているIDGキャピタルの代表であるリアン・メン（Lian Meng）氏が、PhoenixFin Pte Limitedの取締役を辞任した。彼らに対してコインテレグラフからインタビューを求めたが、応じてもらえなかった。
わずか2日後の2019年10月16日、KuCoinの名前とロゴの商標は、以前はPhoenixFin Pte Limitedから商標を継承していたセーシェルを拠点とする事業体であるMEK Globalから譲渡された。商標は、MEK Globalとまったく同じ住所を持つ別のセイシェル登録の事業体であるFortuneIconに渡った。
少なくとも過去1年間、KuCoinのユーザーは同社の企業構造を理解するためにRedditを利用していたが、取引所自体からは明確な回答はなかった。言及された事業体もしくは個人から応答がない場合、なぜこのような広範囲にわたる組織再編が行われたのか、なぜ会社の商標が再割り当てされているのかは不明だ。
You氏とは誰か？
KuCoinとPhoenixFin Pte Limitedの共同創設者が同社を辞任したため、中国在住のYou Au氏などの新しい取締役が任命された。2019年11月20日に、PhoenixFin Pte Limitedの所有権は、ケイマンを拠点とする持株会社であるPhoenixFin LimitedからYou Au氏に譲渡された。同氏は10月14日の組織再編時に取締役に任命されていたが、KuCoinとの以前の関係は不明だ。取引所のウェブサイト、マーケティング資料、2020年3月17日付のプレスリリース、または取引所について説明した2017年のホワイトペーパーでは、同氏への言及はされていない。
You Au氏についてはほとんど知られていないが、同氏は28歳で、正式には中国・四川省の都市である綿陽市に居住している。Phoenix Pte LmitedのCEOであるJohnny Lyu氏が3月17日にKuCoin GlobalのCEOに任命されたが、KuCoin Globalの最終的な所有者はYou Au氏のようだ。彼が本当に中国に在住している場合、彼はビットコインまたは他の仮想通貨の取引、イニシャル・コイン・オファリングの提供、および仮想通貨取引所の運営を禁止する中国人民銀行の規制対象となる。
You Au氏もJohnny Lyu氏もコインテレグラフからのコメント要請には反応がなかった。
KuCoinはどこにあるのか?
2018年、KuCoinはその運営主体はシンガポールに実際にあると主張している。香港の住所が「空のオフィス」であるという主張には、次のように答えている。
「実際、KuCoinの香港での公式の住所は、KuCoinの多くの子会社の1つの住所に過ぎない。KuCoinの本社はシンガポールにある。KuCoinはグローバル企業であり、300人を超える従業員を抱え、中国、フィリピン、シンガポール、タイに主要なオフィスがある」
取引所の現在の地理的所在地についてはあまり明確ではない。同社のウェブサイトでは、会社のプロフィールに「セイシェルで事業を行っている」と記載されている。2018年のブログ記事では言及されていない管轄区域である。バイナンス、コインベース、リップルとは異なり、KuCoinはシンガポール金融管理局のペイメントライセンスなしで運営するための要件延期を請求する申請を提出していなかった。このような延期により、これらの企業は7月まではライセンスなしでペイメントサービスプロバイダーとして運営できる。
ライセンスが無い、もしくは延期することがなければ、KuCoinはシンガポールで合法的に活動することはできない。KuCoinがシンガポールで営業しているかどうか、もしくは取引所が実際には現在は別の場所で営業しているかどうか依然として明らかではない。
質問にも回答無し
シニカルなジャーナリストは、ドイツの19世紀の鉄血宰相オットー・ビスマルクの言葉を愛している。「公式に否定されるまでは何も確認されていない」。しかし、KuCoinに繰り返し要請したにも関わらず、前取締役と現在の取締役は、この記事へのコメントをすべて拒否した。
この記事で言及されている個人または会社自体に関する詳細が明らかでないことから、仮想通貨取引所KuCoinのユーザーは、シンガポール、セイシェル、中国、またはほかの国のどこに送金しているかに関して、回答を求めることになる可能性があるだろう。
参考資料：https://jp.cointelegraph.com/news/singapore-court-locks-crypto-exchange-kucoin-s-web-domain
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Source: 仮想通貨情報局